すべてが猫になる

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アリスが語らないことは/All the Beautiful Lies  (ねこ4匹)

ピーター・スワンソン著。務台夏子訳。創元推理文庫

大学生のハリーは、父が崖から転落して死んだと知らされる。実家に戻ると、美しい継母アリスが待っていた。刑事の話では、父の死体には殴打の痕があった。ハリーはアリスと話し合うが、その態度に違和感を覚える。これは事故か、仕組まれた死か? 過去と現在が入り交じった2部構成で描かれ、ある場面で読む者の予想をはるかに超えた展開が訪れる。『そしてミランダを殺す』の著者の恐るべき筆力を堪能できる圧巻のサスペンス!(裏表紙引用)
 
「ケイトが恐れるすべて」「そしてミランダを殺す」が良かったので、こちらも。1,2作目と比べ少し勢いが落ちたかな?と思わなくもないが、変わらず面白かった。
 
<現在>の章。父親ビル、継母アリスと暮らすミステリ好きの大学生ハリー。ある日突然父親が散歩中に足を踏み外し転落死したと聞かされ、呆然とする。残された継母との暮らしはハリーに変化をもたらしたが、父の死に疑惑があると感じアリスへの思慕が揺らぎ始める。
 
<過去>の章。若い頃のアリスが登場する。アル中のシングルマザーに育てられたアリスは、突然継父となったジェイクに心惹かれる。やがて彼らは母親の居ぬ間に情事を重ねるようになるが…。
 
過去と現在が交互に展開するとともに、現在のあの人物が誰なのか、現在起きた事件は誰が引き起こしたものかが露呈する。ジェイクとアリスの関係は読んでいて気まずいものだったし、ハリーとアリスの関係も何かを示唆しているようでちょっと不気味。健全ではない不穏な感じ。そもそもの悪人、下手人は明らかになって破滅していく様はそりゃあ面白いが、なんとなく作中で流されたままになっているアリスの人格が1番恐ろしいのでは。。誰も何も言わないけど、諸悪の根源はここにあるんじゃないかと思わせるのはうまい。全体的にドロドロしてる、この絶望的なラストも因果応報?なんて考えてしまったり。