すべてが猫になる

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カエルの小指  (ねこ3.7匹)

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道尾秀介著。講談社文庫。

「久々に、派手なペテン仕掛けるぞ」 詐欺師から足を洗い、実演販売士として生きる道を選んだ武沢竹夫に、 訳ありの中学生・キョウからとんでもない依頼が。 母親が残酷な詐欺被害にあったのを境に、厳しい現実を生きることになったキョウ。 武沢は彼女を救うため、かつての仲間を再集結、大仕掛けを計画する。(裏表紙引用)
 
カラスの親指」続編。
再読したほうがいいかなあ~、と思いながら、思うだけで結局全然カラスの内容を覚えていないまま読了。
 
もと詐欺師の武沢は、現在実演販売士。実演中に接触してきた中学生のキョウに、「騙されてショッピングモールから飛び降りた母親の復讐に協力して欲しい」と頼まれてしまった。かつての仲間、貫太郎、まひろ、やひろ、テツと共にある大仕掛けを計画するが――。
 
「騙し」の手法を取っている作品なので、誰が誰をどこで騙しているのか?気にしながら読んだ。次々と明らかになるキョウの秘密や武沢の仕掛け、最後まで気が抜けない。ただ、仲間うちで卑怯な騙しを行うことはない、ということだけは信じられるので不快さはない。キョウの母親を騙した男やキョウの出生にまつわる人間たちには許しがたい気持ちが沸いてしまったが。中学生でこんな悲惨な経験をして、根の優しい武沢が同情してしまうのもわかる。もう完全に武沢たちは詐欺師から足を洗ってるのね。誰かが不幸になる騙しはダメだけど、誰かを思っての仕掛けならいいんじゃないかな。最後にも驚きの真実があるけれど、武沢やキョウの願い通りになっているといいな。いや、きっとなってる。直接的な説明はないけれど、道尾さんの作品ならば描かなくても分かる先のことってきっとある。