すべてが猫になる

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私のサイクロプス  (ねこ3.8匹)

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山白朝子著。角川文庫。

書物問屋で働く輪は、旅本作家・和泉蝋庵と彼の荷物持ち・耳彦と未踏の温泉地を求める旅に出ては、蝋庵のひどい迷い癖のせいで行く先々で怪異に遭遇していた。ある日山道で2人とはぐれてしまった輪は、足をすべらせて意識をうしなう。眠りからさめると、背丈が輪の3倍以上あるおおきな男が顔をのぞきこんでいた。心優しき異形の巨人と少女の交流を描いた表題作を含む9篇を収録した、かなしくておぞましい傑作怪異譚。(裏表紙引用)
 
和泉蝋庵シリーズ第2弾。
迷い癖のある蝋庵先生と、荷物持ちの耳彦と書物問屋の輪の怪奇道中が9編収録。特に耳彦が酷い目に遭うお話が圧倒的に多くて気の毒になった。貧乏神とか言われているし。作者が気に入っているキャラなのかそれとも逆なのか。
 
輪が一つ目の巨人と交流を深める話や妊婦に毒を飲ませてわざと奇形児を産ませる村の話や井戸の中に死んだ夫の心臓が入っている話など、思わずゾーッとなる怪異話ばかり。指をアメみたいに舐める少年やら子どもの水死体やら耳の塩漬けやら、一体この人の想像力はどこまで行ってしまうのか、と思えるものが次々現れる。怖い通り越して気持ちが悪い。
 
輪が主人公となった表題作や「死の山」「呵々の夜」「水汲み木箱の行方」が特に好きかな。後半に好きな話が集中していた。欲を言えば、蝋庵先生がもう少し目立って欲しかったな。前作のように、最終作に何かあるのかと思ってたのになかったし。全体的には前作のほうが出来が良い気もするけれど、個々の怪異は期待以上。続編あればいいな。