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こうして誰もいなくなった  (ねこ3.7匹)

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有栖川有栖著。角川文庫。

仮想通貨で成功した若き大富豪に招待された10名の男女が、"海賊島"で巻き込まれる不気味な連続殺人事件――クリスティの名作を大胆に再解釈した表題作をはじめ、書店店長の名推理が痛快な「本と謎の日々」、肥大化した男の欲望と巨大生物の暴挙に恐怖する「怪獣の夢」、遊び心に満ちたタイポグラフィが楽しい「線路の国のアリス」など多彩な14篇を収録。ジャンルを超越した物語世界の魅力を堪能できる、唯一無二の作品集!(裏表紙引用)
 
有栖川さんの寄せ集め短編集。シリーズ外の作品集というのはあるけれど、こういうジャンルばらばらなものは有栖川さんには珍しいね。14編もあるのでまあ簡単に。
 
「館の一夜」は、館モノミステリーと見せかけてちょっと茶目っけのあるどんでん返しが効いた作品。「線路の国のアリス」は、不思議の国のアリスを下敷きにした、少女アリスの大冒険。有栖川さんの空想力が光る。「怪獣の夢」官房長官にまで登りつめた男が少年の頃から見る怪獣の夢を回想する。そうそう政治家の思い通りにならないと思うけれど、願望かな。「劇的な幕切れ」はネットで知り合った女性と青酸カリ自殺を計画した男の成れの果て。現実では改心する人間なんてそうそういないだろう。「出口を探して」は白い部屋で目覚めた女性が、同じ境遇の男性と迷路の出口を探す話。そのままそこで声を掛ければいいのに、と思ってしまった。「未来人F」明智小五郎シリーズのパスティーシュ。メタあり乱歩愛あり。「本と謎の日々」は書店で起こる数々の謎を本を読まない店長が解き明かす話。シリーズ化して欲しい。「こうして誰もいなくなった」はそのまんま、クリスティの名作の新解釈。なかなかのページ数で気合いが入っている感じだけどイマイチだったかな。ヘンな探偵出てくるし(笑)。モトが有名すぎて、あれ以上の意外性は生まれにくいと思う。チャレンジ精神は買いましょう。
 
残りはショートショートみたいな作品が数作。どれもまあ面白かったけど、ピンと来なかったものも。
 
ジャンルが多岐に渡っていてちょっと疲れたかな。好きなのは「本と謎の日々」「劇的な幕切れ」。