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白墨人形/The Chalk Man  (ねこ3.8匹)

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C・J・チューダー著。中谷友紀子訳。文春文庫。

1986年の夏、12歳のエディと友人たちが見つけたバラバラ死体。終わったはずだった事件が、30年後のいまよみがえる。チョークで描かれた棒人間とともに。少年小説の切なさと、サイコ・スリラーの恐怖を繊細かつ大胆に往還し、恐るべきラストが待ち受ける。S・キング激賞、世界40カ国以上刊行の傑作が文庫化。(裏表紙引用)
 
スティーヴン・キング激賞、徹夜必至の傑作ミステリーということで。「わたしの書くものが好きなら、この本を気に入るはずだ」まあ確かにそうかも。チョークで描かれた白墨人形が街の人々を殺して回る?というシチュエーションもキングっぽいし、12歳の少年4人組(少女1人)が死体探しに森へ行ったらホントに死体に遭遇してしまう、っていうのが完全にスタンド・バイ・ミー。文体もキングを真似して描いたみたいな感じだし、ロック歌手の固有名詞がバンバン出てくるのもそう。
 
子どもたちが死体を発見した1986年と、大人になった2016年を語り手を同じにして交互に展開していき、ホラーの恐怖とリアルな人間関係の闇の両方を味わわせてくれる。語り口はキングより軽いがテンポはいいほうで、たとえば平和なシーンからいきなり一転して遊園地の遊具が飛んで来て大事故になったり楽しいパーティーで突然殴り合いが始まったりと、緩急の付け方がうまいかな。
 
個人的には白墨人形によるホラー的展開を期待していたので、少女をバラバラにして埋めたのは誰か、親友や犬を殺したのは誰かを問うミステリーに完全に寄ってしまったのが残念だった。正直それほど意外な真相でもないしね。。それぞれが裏の顔を持っていてドラマティックではあるけども、どこかで読んだような、の域を出ていない気がした。とはいえ好みといえば好みなので、次作が文庫で出たら読んでみてそれで決めようかな。