すべてが猫になる

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告解  (ねこ3匹)

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薬丸岳著。講談社

飲酒運転中、何かに乗り上げた衝撃を受けるも、恐怖のあまり走り去ってしまった大学生の籬翔太。翌日、一人の老女の命を奪ってしまったことを知る。自分の未来、家族の幸せ、恋人の笑顔―。失うものの大きさに、罪から目をそらし続ける翔太に下されたのは、懲役四年を超える実刑だった。一方、被害者の夫である法輪二三久は、“ある思い”を胸に翔太の出所を待ち続けていた。贖罪の在り方を問う、慟哭の傑作長編。(紹介文引用)
 
最近の薬丸作品はどうもいけない。正解のない、考えさせられるテーマを真摯に扱うからこそ読んでいて自分事のようにのめり込めるのに、もう答えが目の前にあるものに対して主人公がなぜか足掻いているように見えるのがこの作品。今作は飲酒運転の末被害者を200メートルも引きずったあげく逃走した大学生が主人公である。人を撥ねた自覚がありつつも「犬か猫だと思った」という供述で逃げ、出所してからも若き貴重な4年間を刑務所で無駄に過ごすことになったと嘯く。自分は運が悪かっただけだと。いつまで経っても更生する様子のない翔太が一体最後どうなってしまうのか気になって読み続けたが、加害者・翔太のふてぶてしい人物像に対して被害者遺族側の怒りのパワーが圧倒的に足りないのが不満だった。翔太の頭の中にあるのは反省の心より自分の将来がどうなるか、その一点しかないように思えた。その彼がここまで心を入れ替えるのだから、それに相当するような読む者に刺さる何かがあって欲しい。父親の手紙も引っ張った割にたいした内容ではなかったし、被害者遺族のじいさん、戦争とひき逃げを同列に語るなよ。。
 
翔太の元恋人・綾香の人物造形もいいとは思えなかった。この状況で子どもを産んだことに対しては人それぞれとして、いつまで女は「じっと耐えて、料理を作りにくる」のが男にとっての理想なんだろうか。翔太の事故が故意ではなかったのは明確として、人だと思わなかった、なんて言う人私なら絶対信じないわ。ニュースでよくその台詞聞くけど、あれ信じる人います?
 
うーん、なんか一つ一つの言動が共感できない人ばっかりでイライラしてしまった。。どうもテーマに対して内容が軽いのよね。。難しいテーマを予定調和でまとめるぐらいなら、試行錯誤しながらもタブーに挑む貫井さんのほうがずっといいと思う。
 
ちょっと厳しいかな。でも薬丸さんのファンだからこそ持ち直して欲しい一心でこのまま投稿します。