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ミスター・メルセデス/Mr. Mercedes  (ねこ3.8匹)

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スティーヴン・キング著。白石朗訳。文春文庫。

暗い霧雨の朝。仕事を求める人々の列に、何者かが駆る暴走車が突っ込んだ。多数の死傷者を残して車は走り去り、事件は未解決に終った。そして今、退職刑事ホッジズのもとに犯人からの挑戦状が届く。こいつをこの手で捕らえてやる。決意したホッジズは、孤独な調査を開始した。アメリカ最高のミステリー賞、エドガー賞受賞作。(上巻裏表紙引用)
 
三部作の一作目。
 
キング初のミステリー。ハローワーク(?)の行列に突っ込み多数の死傷者を出したグレーのメルセデス。犯人<ミスター・メルセデス>は車内に証拠を残さず、捜査は難航していた。一方、退職刑事ホッジスのもとに犯人から挑戦状が届いた。1人喚起したホッジスは脅迫状の件を警察に話さず捜査を始めるが…。
 
犯人側の視点とホッジス側の視点、交互に構成されているのだが、この犯人が結構おバカである。ホッジスの挑発に簡単に乗せられるし、用意した毒薬は母親が飲んでしまうし。しかも警察側が、メルセデスの本来の所有者である女性がキーを差したままだったのではないかと執拗に女性を責めるのに強烈な違和感があった。悪いのは車を盗んで人を殺した犯人だけであって、この不注意な女性に共犯レベルの罪があるように追い詰めるのは違うのではないかと思うのだが。。実際自殺の原因はそこにもあったのではないか。
 
犯人サイドの狂いっぷりはさすがキングといったところ。ホッジス側のロマンスも読みごたえがあるし、アルバイトのジェロームやホリーとの友情には胸温まる。ラストが「続く」だったのでまだ正当な評価はできないが、ホラーキングよりは登場人物も少なくてするすると読みやすかったかなー。
 
これ言うか迷ったけど、読みながらずっと感じていたこと。
追う側と追われる側(猟奇的犯人)が交互に視点を変えて進んでいく、、、これジェフリー・ディーヴァーと全く同じ構図。なのでどうしてもあっちの面白さと比べざるを得なかった。犯人にカリスマ性はないし、犯行の残虐性も描写が弱いし(ここ弱くてどうすんだよキング)、どんでん返しもないし、罠を仕掛けることもないし、、全部そのまんますぎてちょっと読み応えなさすぎたかな。。。