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修羅の家  (ねこ3.7匹)

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我孫子武丸著。講談社

簡易宿泊所で暮らす晴男はレイプ現場を中年女性・優子に目撃され、彼女の家につれていかれる。 そこには同じ格好をした十名ほどが「家族」として暮らしていた。 おぞましい儀式を経て一員となった晴男は、居住者は優子に虐待されていることを知る。 一方、区役所で働く北島は、中学時代の初恋相手だった愛香と再会し「家族」での窮状をきく。 北島は愛香を救い出す可能性を探るが、“悪魔”が立ちはだかる。(紹介文引用)
 
「殺戮にいたる病」を凌ぐ傑作、との触れ込み作品だったらしいが、全くそんなことはないので期待なさらず。共通しているのが暗く重たいお話ということぐらいかな。作品自体に仕掛けがちょっとあるということならこれもそうかも。
 
主人公は区役所非常勤勤務の北島。女性経験もなく性格も地味で、唯一の青春の思い出は中学時代の初恋相手・愛香。ある日北島は愛香と再会し勇気を出して食事に誘い出すが、昔の愛香とはまるで違うみすぼらしい姿に彼女の現状を知る。彼女は悪魔と呼ぶ女性と、たくさんの家族と同居しているというがそこはまさしく修羅の家だった。北島は愛香を救うため奔走する。
 
修羅の家の新しい家族となった晴男のレイプ殺人シーンから始まるのでビックリ。目撃した優子の家に連れて行かれてからの信じられないような虐待、暴力の数々にますますゲンナリ。容赦ないなあ、我孫子さん。晴男の顔に跨って家族全員が〇〇するシーンとか、同居の男の1人が罰として尻を鞭で50叩きされるシーンとか、、吐き気がしそう。なんでこんな女の言うことを聞くんだろう?と不思議でしょうがなかった。逃げられるし女1人なら力で負けないはず。洗脳ってこういう感じなんだろうか。現実の事件を下敷きにしているから、ありえない、とは言えないのよねえ。この人たちのそばに1人でも普通の感覚を持った賢い人がいればこんなあっさり言いなりにならなかったろうに。こんな生活、正直どんな弱みを握られていたとしても耐えられない人が大半だと思う。刑務所のほうがよっぽどマシでは。まあそれが洗脳か。犯罪を背負わされたとしても、主犯ではないのだから情状酌量の余地はあるはずだけどな。
 
まあそんな内容なので猛スピードで読んでしまった。最悪な結末と捉えている人も多いようだけど、そうかな?と思う。どんな状況であれあの家にいるより最悪な人生なんてないと思うけど。ラストがバタバタしている感じで、深みがなかったのが残念。もっと優子の人生を掘り下げるなり、他の家族の行く末なりが見える結末にして欲しかった。
虐待のバラエティには富んでいるし面白さはあるので、全体としての出来はまあアレだけどこういう過激な犯罪ものが読みたい、という読者にはおすすめかな。