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黒牢城  (ねこ4.2匹)

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米澤穂信著。角川書店

信長を裏切った荒木村重と囚われの黒田官兵衛。二人の推理が歴史を動かす。 本能寺の変より四年前、天正六年の冬。織田信長に叛旗を翻して有岡城に立て籠った荒木村重は、城内で起きる難事件に翻弄される。動揺する人心を落ち着かせるため、村重は、土牢の囚人にして織田方の軍師・黒田官兵衛に謎を解くよう求めた。事件の裏には何が潜むのか。戦と推理の果てに村重は、官兵衛は何を企む。デビュー20周年の到達点。『満願』『王とサーカス』の著者が挑む戦国×ミステリの新王道。(紹介文引用)
 
ホノブ新刊ということで何の迷いもなく発売日に買いに行ったが、まさか戦国ミステリだとは……。時代モノがとにかく苦手な私、これは骨太系なうえ単行本にして450ページ弱の大作なので、読めないだろうなあ…と思ったら読めてしまった。さすがにサクサクとはいかず、読書中メモ魔となったが…。普段の倍はかかったかな(スピード)。読み慣れない名前や地名、用語?などのオンパレード。しかし読むうちに慣れてきて、ああこりゃ十二国記なんかを読むのと同じ要領だなと理解。
 
前置き長い(それぐらい時代小説を普段読まないということ)。
 
時代は戦国。有岡城城主・荒木摂津守村重は織田に背き城に立て篭った。村重は毛利に転じた播磨衆が織田に靡きかねないと考え、織田の軍使として謀叛の不利を訴えに来た小寺(黒田)官兵衛を幽閉。やがて村重は、度重なる難事を官兵衛に解かせることになる。
 
春から冬にかけ、人質にとった寝返り者の息子が納戸で何者かに殺害される第一章、討ち取った大将の首が大凶相に転じた第二章、密使を命じた僧侶と御前衆の一人が殺害され、宝物が奪われた第三章、僧侶らを殺害した武将を先に撃ったのは誰かを探る第四章、そしてその事件と黒田の企み、村重の運命を全てあからさまにする最終章で構成されている。全ての事件がこの時代の武士の生き様、背景などを浮き彫りにしていて目が離せない。村重の、よそ者としてのコンプレックスや裏に隠された奸計からくる家臣らへの不信、評判を気にする姿も人間らしい。黒田の凛々しさがやがて腹黒いものに取って変わる様も不気味だ。日々命をかけ戦を生きがいとする武士一人一人に個性がうかがえた。人の命を命とも思わない戦国の世に、こうして理不尽な責め苦を恨み極楽を求める人々がいる。血で血を洗うようなストーリーに眉をしかめることもあったが、読み続けたことに慰められるような、胸をなで下ろすシーンで終わった。
 
登場人物のその後を記す章があったが、みんな意外と生きてる。。
 
面白かった!今後時代ものを積極的に読もう…とまではならないのはホノブの文章だったからこそだと分かっているので。。やはり私がこれだけ理解して楽しんで読めるというのは相当の文章力あってこそだと思う。