すべてが猫になる

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火のないところに煙は  (ねこ3.8匹)

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芦沢央著。新潮社。

「神楽坂を舞台に怪談を書きませんか」突然の依頼に、作家の「私」は、かつての凄惨な体験を振り返る。解けない謎、救えなかった友人、そこから逃げ出した自分。「私」は、事件を小説として発表することで情報を集めようとするが―。予測不可能な展開とどんでん返しの波状攻撃にあなたも必ず騙される。一気読み不可避、寝不足必至!!読み始めたら引き返せない、戦慄の暗黒ミステリ!(紹介文引用)
 
作家の「私」が、小説新潮に掲載された怪談を集めた短編集、という体裁を取った作品。芦沢さんこういうのも書くのねえ。
 
「第一話 染み」
占い師に別れた方がいいと言われたカップルの男のほうがそれを聞いて激高し、人が変わったように「別れるなら死ぬ」と恋人を脅迫し始めた…。
人間に書けないサイズの文字「あやまれ」が怖いよ~。。占い師を怒らせた覚えのないあの人もなぜ犠牲になったんだろう。
 
「第二話 お祓いを頼む女」
フリーライター君子のところに勝手に乗り込んできた、ファンだと自称する女。自分や家族は祟られているからお祓いをしてくれと言うのだが…。
頭おかしすぎでしょ。。全然話が通じない人ほど怖いものはない。女の息子のランドセルの傷や痣などから真相を見抜いた榊すごい。電話なのに。でも本当のところはどうなんだろう。
 
「第三話 妄言」
郊外に新居を買った新婚夫妻だが、親切と見えた隣人が妊娠中の妻に「夫が浮気しているところを見た」というデマを吹き込みはじめ…。
ぎょえ~~~。。。信じる妻もどうかと思うが、この隣人のおばさん、内見の時に明らかに距離感間違えてる感じなのによくこの家買ったな、と思った。。単なる狂人の話で終わらないのが怖い。
 
「第四話 助けてって言ったのに」
ある新婚夫妻が義母と同居することになり、最初はうまくいっていた。しかし妻が毎晩恐ろしい夢を見るようになり…。
人間って内心何を考えているかわからないもの。実際にどうだったのかは分からないけれど、くだらないと笑えないところもある。
 
「第五話 誰かの怪異」
大学生になった岩永は、安く借りることが出来たアパートの一人暮らしを満喫していた。しかし隣室や自室で霊障が起きるようになり…。
ちょっと四話目と通じるところあるのかなあ。人の親切とかちょっとした行為って裏の意味があったりするのかも。本人には表かもしれないけど。
 
「最終話 禁忌」
作家の「私」が一話から五話までの怪談を考察しまとめたもの。私はなぜ五話目を書いたのか?一話目の占い師の正体は?
 
以上。
怪異に遭う人らが、会ってはいけない人に会ったり住所を教えたり家に入れたりと、どうも危機管理能力が低いのよね…。それにイラっとしつつ。結局自分にも原因があるっていう。まあお話だからそれでいいんだけど。
 
はっきりとした真相が提示されているわけではないが、こうではないか、という論理的な推理が、各話から最終話に引っ張ってきてまとまる感じ。それが正しかったとしたら、じゃあ一体占い師は…?という大きな謎が立ちはだかってしまう。榊は行方不明っぽいし、怪談×ミステリーとしてはよく出来ている作品じゃないかなー。