すべてが猫になる

ヤフーブログからお引越し。

お探し物は図書室まで  (ねこ4匹)

f:id:yukiaya1031jp:20210505194219j:plain

青山美智子著。ポプラ社

お探し物は、本ですか?仕事ですか?人生ですか?悩める人々が立ち寄った小さな図書室。不愛想だけど聞き上手な司書さんが思いもよらない選書と可愛い付録で人生を後押しします。『木曜日にはココアを』の著者が贈る、明日への活力が満ちていくハートウォーミング小説。(紹介文引用)
 
お初の作家さん。色々なところで話題になっているようで、気になったので読んでみた。「木曜日にはココアを」の作家さんだったのか!と言っている人がチラホラいたので、そちらも絶対読まなくては。
 
小学校に併設されているコミュニティハウス内の図書室にいる、ものすごく大きい白熊のような司書・小町さん。特技は選書と羊毛フェルトで、相談者にピッタリの本と付録の羊毛フェルトを付けてくれる。必要以上のことは喋らず、でも知識は豊富で人生に行き詰まった人の光になるような言葉を知っている。神様みたいな司書さんだな。
 
自分の仕事がつまらないと決めつけている販売員や、アンティークショップを開くのが夢なのに一歩踏み出せない営業マン、子どもを産んで以来何もかもうまくいかない元雑誌編集者、30歳のニートくん、定年退職して自分の存在意義が見いだせない初老の男性。それぞれ悩みは違うけれど、小町さんが提示している答えは共通していると思う。心が腐っている時は部屋が汚かったり、生活習慣が乱れていたり、ジャンクフードばかり食べていたり。流行りの「ていねいな暮らし」じゃないけれど、バランスの取れた手作りの食事、清潔な部屋、自然や人との会話を愛することって本当に大事だと思う。それって心と直結してるから。自分も、太陽に当たることや季節の花々に目をやること、野菜をしっかり食べて部屋を綺麗に保つこと、それで幸せを感じるようになった。若い頃はそんなことに意義を見いだせなかったから、この本で伝えようとしていることに全て共感した。刺激も意外性もないけれど、一日一日を大切に生きたいと思っている人には響く小説じゃないかな。
 
小町さんは謎めいているけれど、他の作品に彼女の過去が色々書かれているらしい。ぜひ読みたい。映像化するなら小町さんはマツコ・デラックス天童よしみだな(怒られるぞ)。