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ついてくるもの/誰かの家  (ねこ3.8匹)

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三津田信三著。講談社文庫。

実話怪談の姿をした七つの怪異譚が、あなたを戦慄の世界へ連れていく。薄気味の悪い男が語る夜毎の恐怖(「夢の家」)、廃屋から人形を持ち帰ってしまった私の身の上に次々と……(「ついてくるもの」)、同居人の部屋から聞こえる無気味な物音の正体は……(「ルームシェアの怪」)。“取り憑かれる”ホラー短編集。(裏表紙引用)
 
三津田さんのホラー短編集を2冊。まずは「ついてくるもの」。
 
「夢の家」
異業種交流会で知り合った女性の言動がおかしいため縁を切ってからというもの、男性の夢に毎晩その女性が現れる。しかもその夢は毎回少しずつ違っていて…。
自分の家に誘う定型句が怖い。行ったらどうなるのやら。。
「ついてくるもの」
近所の家の裏に飾られていた雛人形を持ち帰ると、次々と家族に怪異が起こる話。
そもそも、人形なんて持ち帰るべきじゃないわね。。いわくつきとなればなおさら。
ルームシェアの怪」
一軒家で3人の人間とルームシェアを始めた女性。やがてそのうちの1人が、いないはずなのにずっと部屋にいるような気配が…。
趣向を少し変えて、ミステリ的な真相。
「祝儀絵」
叔母からもらった一枚の祝儀絵がもたらした恐怖体験。絵の人物の顔が少しずつ動く、というだけで恐怖なのだが、青年の彼女が言う「ぺらぺら」の意味を想像するとそれが一番ゾワっとした。。書いてないからなおさら。
「八幡藪知らず」
入ったら出てこられないという噂の森へ入ることにした少年たちの悲劇。
この年代の男の子って怖いもの知らずなのか度胸試しなのか。。何もいなくても、迷い込んで出てこれないような怖さが森にはある。
「裏の家の子供」
引っ越した先の近所の家には子供がいないのに、いる…。
ビジュアル的にはこれが一番見てみたいかもしれない。怖いけど。顔が…顔があ。。。
「百物語憑け」
怪奇作家自身の体験談ふう。これがラストというのも、構成としてうまい。
 
「ついてくるもの」以上7編。
 
 
再会した中学時代の友人は、奇妙な話を語り出した。幽霊屋敷と噂の奇っ怪な邸宅。無人でも廃墟でもなく、時折人影や窓の明かりが目撃されるという。不良少年だった彼は悪友に唆され、半ば肝試しのように館に独り忍び込む。(表題作)日常の裂け目の奥底で戦慄が踊る、"身も心も総毛立つ"ホラー短篇小説集。(裏表紙引用)
 
「つれていくもの」
1人でバイク旅行をしていた男子高校生が、泊まったバンガローで知り合った人々と体験した恐怖。こういう綺麗な女性が恐怖の対象になるとひときわ怖い気がする。
「あとあとさん」
幼稚園児の頃の恐怖体験。祖父母と両親と暮らしていた男児が、軽い気持ちで母と流行らせた「あとあとさん(なんかカワイイ)」。祖父母の存在と、母親の怯え方が印象的。一体何がいたんだろう。。
ドールハウスの怪」
友だちになった転校生の父親が蒐集していたドールハウスはなんだか作りがおかしい…。人形が実際の家族構成と同じ、ってだけで先の想像はつくものの、幼少期のみならず人生そのものに関わり続けるところが恐怖。
「湯治場の客」
病んだ身体を治すため湯治にやってきた男。混浴場で出会った地元の女性は一人のようだが、男の声がする…。いやあ、こういう人に関わってはいけないのに関わっちゃうのが男のサガ?リアルでも怖い、こうなっても怖い元夫であった。。
「御塚様参り」
呪いの藁人形の話。不倫相手の妻を呪う、というのが女性心理の複雑さ。まあ男もどうかと思うけど。正式な呪い方、というのがあるのか…。ここまで苦労してまで呪いたい、と思いつめるのがよっぽど怖い。
「誰かの家」
若い頃の空き巣行為で体験した恐怖。そもそも、他人の家に忍び込むことが怖いというのに。。ちょっとどころかかなりおかしいのに止められない彼らもどうかしている。
 
以上「誰かの家」6編。
 
どちらも系統と構成が似ていたのでまとめて読んだ。三津田作品を担当している村田修さんのイラストがすごくいいね。どの話もゾクゾクさせる筆致で、実体験風味なので夜読むのにオススメ。怖くない話が、ない。。。「湯治場の客」が一番好きだったかな。
読みやすくレベルが高いものばかりなので怪談好きにはたまらない作品集。やはりこういうジャンルが一番筆が乗るのかな。