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踊る彼女のシルエット  (ねこ3匹)

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柚木麻子著。双葉文庫

義母が営む喫茶店を手伝う佐知子と芸能事務所でマネージャーをする実花。出会ってから十六年。趣味にも仕事にも情熱的な実花は、佐知子の自慢の親友だった。だが、実花が生み育てたアイドルグループが恋愛スキャンダルで解散に追い込まれたのをきっかけに、彼女は突然“婚活"を始める。「私には時間がないの」と焦る実花に、佐知子は打ち明けられないことがあり……。幸せを願っているのに、すれ違ってしまう二人が選ぶあしたとは。揺れうごく女の友情を描く長編小説、待望の文庫化。(単行本『デートクレンジング』より改題) (裏表紙引用)
 
柚木さんの文庫新刊。「デートクレンジング」の改題らしいが、タイトルはそっちのほうがインパクトあって良かったんじゃないかな…。どちらでも内容には合っているけれど。
 
 今回の主人公はちょっとキツい。35歳の既婚女性・佐知子が、アイドルのマネージャーをやっている友だちを推す、という感覚がどう頑張っても理解できなくて…。スナックで振り付けバリバリで熱唱するとかも…周りがノってるならともかくだな。。怖いよ。。これならまだ、35歳で独身で焦って婚活して空回りしている実花のほうが人間らしいと思った。婚活仲間の芝田の言動とか見てるとゾっとする。そこまでして世間に迎合して結婚しなきゃいけないかね?婚活市場のことは知らないけれど、男が安心する無難で野暮ったい服装がマストとか男との最初の会話で固有名詞を出してはいけないとか、芝田の掲げるマニュアル笑えなかった。ちょっとこの作品自体が男性全体を貶めすぎじゃない?実花や佐知子の手にかかると、婚活相手の松本さんや田山さんがその実態以上に「勝手な男」に認定されていて、いやいや…と突っ込みたくなった。
 
まあそんな感じで終始イライラ~。。とはいえこの作品全体のテーマは、「デートをぶっつぶせ」。女は適齢期になると結婚しなくてはいけない、結婚したら出産しなくてはいけない。性的な目で見られ、擬似恋愛の相手として存在しがちな女性アイドルを引き合いに出すことで、ジェンダー問題に一石を投じている感じはする。それ自体に甘んじている女性も決して少なくないと思う。この問題は佐知子や実花、個人がどうこう騒いだところで、社会を変えなくてはどうしようもない。そして、女性はライフステージが変わると今までの人間関係が崩れる、というのも事実。それならそれでそこまでの関係だし、同じステージに立てば関係が修復する場合もあるし、新たな地で別の人間関係を築いていけばいいのでは。
 
そんなこんなで後半まではそこそこ頷ける部分もあったのだが、バスツアーでステージが盛り上がって大団円、みたいな展開になって一気に白けてしまった。なんなんだシェアハウスって。20そこそこの女の子のステージで、35歳の素人の実花に対し客席で熱狂する35歳の妊婦・佐知子。。なんかホラーなんですけど。。人目を気にせず好きなものは好きでいていいには賛成するけれど、方向が狂っている気がして、自由とは?開放とは??と首を傾げる作品でした。もっと普遍的で共感できるものがいいな。。まあ、さすが柚木さんの文章ってことで一気に読めるし面白いのは間違いないのだけど。