すべてが猫になる

ヤフーブログからお引越し。

追憶の夜想曲  (ねこ4.4匹)

f:id:yukiaya1031jp:20210319165101j:plain

 中山七里著。講談社

豪腕ながらも、依頼人に高額報酬を要求する“悪辣弁護士”御子柴礼司(みこしばれいじ)は、 夫殺しの容疑で懲役十六年の判決を受けた主婦の弁護を突如、希望する。 対する検事は因縁の相手、岬恭平(みさききょうへい)。 御子柴は、なぜ主婦の弁護をしたのか? そして第二審の行方は?「王様のブランチ」「ダ・ヴィンチ」などで話題沸騰! 『贖罪の奏鳴曲(ソナタ)』の続編!!(紹介文引用)
 
すっかりハマってしまった御子柴シリーズ第2弾。
 
いや~~これも面白かった!!1作目を超えることはないかな?と思って読み始めたのだけど、1作目と変わらずラストの怒涛のどんでん返しと御子柴のある行動にビックリが止まらない。
 
無事退院した御子柴は、前の事件での意趣返しとして宝来が担当している夫殺し事件の弁護を譲ってもらう。主婦がパート先で出会った男との再婚を目当てに無職のDV夫を殺害し懲役16年を求刑される。一般家庭の主婦が起こした単純な事件で、およそ守銭奴の御子柴が相手にするような案件ではないはずだった。果たして御子柴の真の狙いは?被告人は何を隠蔽しているのか?
 
今回は一つの事件だけを追うストーリーなので読みやすかった。たとえどんな夫でも普通なら殺すという選択肢はないと思うので被告人に肩入れ出来ない内容だったが、読み進むにつれ事件の本当の姿が明らかになった。最初に明かされた事実は予想の範囲内かもしれないが、その事実に付随する、一つの家庭の歪んだ実態に衝撃を受けた。被害者にとってそれが最善だったと言う気はないし、何が正解かは分からない。が、登場人物それぞれが、歪んだ家庭環境にさえなければそういう風には人格形成されなかったであろう、と思うと哀れだし、悪意の根源はどこまで遡ればいいのだろうという話になる。真実が暴かれたところで虚しさだけが残るイヤな事件だ。
 
そして御子柴の決断にも震えた。このシリーズ全体を通して、贖罪がテーマとなっているのだろうか?これまた御子柴の行動が最善なのか答えは出ないが、これからの弁護士人生、御子柴はどうなってゆくのだろう?とても興味深い。
 
全体を通して暗く陰鬱な作品だが、被告人の娘・倫子ちゃんの存在が癒しになった。子どもが苦手な御子柴にまとわりつく6歳の天使。彼女の人生も今後は暗いものになるだろうが、今だけは屈託なく笑っていて欲しい。