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密室から黒猫を取り出す方法  (ねこ4匹)

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北山猛邦著。創元推理文庫

密室殺人を企てる犯人の前に一匹の黒猫が現れた。あろうことかその猫は、今まさに密室にならんとする部屋に入り込んでしまい……。思わぬ闖入者に翻弄される犯人だが、さらに猫探しに訪れた探偵も現れる! 完全犯罪を目論む犯人の焦燥を描いた表題作をはじめ、音楽室で起こった犯人と凶器が消失した殺人事件を解き明かす「音楽は凶器じゃない」など気弱で引きこもりがちな名探偵・音野順の五つの活躍を収めた短編集、シリーズ第二弾!(紹介文引用)
 
名探偵音野順シリーズ第2弾。
文庫化遅すぎ…。単行本、2009年でしょ。。いやあ待った、待った。
 
今回も引きこもり探偵の音野が助手の白瀬に発破をかけられてしぶしぶ謎を解きます。5編収録の短編集。
 
「密室から黒猫を取り出す方法」
ホテル敷地内の塔にて上司を自殺に見せかけて殺害した田野だが、トリックを仕掛けている最中に黒猫が室内に入り込んでしまった。そのせいで回収するはずのスプリングが室内に残ってしまったが……。真相はゆるい上にトリックはバカっぽいが可愛いので良しとする。犯人、自爆してるしね。ラストの岩飛警部がカッコ良かった!
 
「人喰いテレビ」
ある別荘地のロッジで、1人の男がブラウン管に吸い込まれるのを同じロッジに宿泊していたUFO研究会の人々が目撃。やがて近隣の雑木林でその男の遺体が発見される。遺体は上半身を脱がされ、右腕が切断されており……。あやしいグループから逃げたくて捜査?を音野らに押し付ける岩飛警部笑。こういうことしてる連中ってまあいそうと言えばいそうだけど…。テレビのアレは……コントじゃないんだから……。。。
 
「音楽は凶器じゃない」
6年前、ある高校の音楽室で、音楽教師と女生徒が強盗に襲われた。教師は死亡してしまったが、事件は未解決のままで……。前回登場した蘭ちゃんが再登場(覚えてないけど)。アレを凶器に使うなんて許せないわあ。。ていうか、無理だろ笑。動機が弱いな~、って思ってたけど、ラストの犯人登場でさらにそう思った、殺人犯してまで手に入れた結果、現在その仕事???でもお話としてはこれでオチてるのかな。
 
「停電から夜明けまで」
資産家の主人の戸籍上の息子である兄弟が、雷雨の晩遺産目当ての主人殺しを計画した。雷雨の日には必ず停電になるという屋敷の特性を利用し、いざその時が来たが…。
まるでコメディ。兄、どんくさいし(しかも名前がペンタって。あだ名??)。悪人って感じじゃなくて、ああ失敗するんだろうなあと思いながらニヤニヤ読んでしまった。でもナイトビジョンやチャット機能など、色々と考えられていると思う。音野の兄・要も登場。あとになって音野&白瀬が登場するのだけど、これはなかなか変則的というか。「一言も喋らずに解決する」の意味が分かった時の衝撃。うーん、うまい。これは隠れた傑作じゃないかな。(しかし、雷雨の日は停電すると分かっている家だというのに5人もの客を呼んでささやかなパーティーっておかしくないか。。日常的に天気予報くらい見るでしょ。)
 
「クローズド・キャンドル」
ある屋敷のアトリエで、主人の鈴谷が首を吊って死亡していた。しかも室内には床一面に火のついた蝋燭が並べられていて…。新キャラ、自称名探偵の琴宮が登場。えらそう、キザ、自信家の三拍子。むしろコッチのほうが名探偵ぽいよね。助手の比之彦もなんか笑えるし。屋敷の娘の花澄さんもなんかカッコイイ系だし。お手伝いの美千代さん、琴宮に惚れるし笑。で、音野は大遅刻(やればできる子、by白瀬)、白瀬は琴宮と3千万賭けちゃうし。色々詰め込んでるねえ。トリックは、その、まあ、ムリだけど絵ヅラだけでもギャグというか…。そして音野にもしかしていい出会いが??ラストキュンキュンしちゃったんですけど。
 
以上。
特にラストの2編が良かった。書いてて楽しいだろうな、これ。と思わせる音野の情けなすぎるキャラが最高。密室は……たぶん……解けた……のかなぁ?……(笑)。引きこもり探偵自体はもう前例があるんだけど、こういうやる気ゼロの喋らない探偵っていうのはかなり面白い。トリックは全て実現不可能そうなものばかりだけど、発想が凄いからそれでアリというか。点数高くしすぎた気もするけど、好きなので許して。