すべてが猫になる

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ホワイトラビット  (ねこ4匹)

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伊坂幸太郎著。新潮文庫

兎田孝則は焦っていた。新妻が誘拐され、今にも殺されそうで、だから銃を持った。母子は怯えていた。眼前に銃を突き付けられ、自由を奪われ、さらに家族には秘密があった。連鎖は止まらない。ある男は夜空のオリオン座の神秘を語り、警察は特殊部隊 SIT を突入させる。軽やかに、鮮やかに。「白兎事件」は加速する。誰も知らない結末に向けて。驚きとスリルに満ちた、伊坂マジックの最先端!(裏表紙引用)
 
伊坂さんの文庫新刊。黒澤久しぶり!
 
兎田事件。世間は誰もそう読んでいないこの立てこもり事件がどうして起こったのか、家の中は実はどういうことが起きていたのか、そしてそれを取り巻く誘拐グループ首謀者や横領した金を隠したコンサルタント折尾、SITの夏之目の裏事情とは!?などを複雑に取り混ぜてめくりめくスリル満点の物語。あまり内容は書けないが…。立てこもられた青年と母親が在宅する一般家庭にも色々秘密があったり…立てこもり犯(この正体も途中明らかに)が警察に連れてこいと要求した折尾も実は…だったり…。とにかく出てくる人物全て事情があって、それで誘拐事件と立てこもりがこんな風にまとまるのかーっ。という感じ。結構犯罪者多い(笑)。
 
なかなか面白かった。長いお話ではないのだけど、いつもの群像劇がどんどん全部繋がっていって…という伊坂さんお得意のスタイル。さらに作中によく取り上げられる「レ・ミゼラブル」同様の手法(作者が読者に語りかける)を用いてあらすじを分かりやすく誘導してくれる。黒澤大活躍だし誘拐犯の兎田も結構憎めないし、夏之目の娘を想う気持ちはホロリとくるし、まあ人間嘘をつかない人はいないし、生まれたからには誰でも色々あるなってこと。オリオン座の地図でわあわあやってるくだりがイマイチぴんと来なかったけどね。