すべてが猫になる

ヤフーブログからお引越し。

上高地の切り裂きジャック  (ねこ3.9匹)

f:id:yukiaya1031jp:20200328150028j:plain

島田荘司著。文春文庫。

女優は腹を切り裂かれ、内臓を抜き取られ、かわりに石を詰め込まれた惨殺死体で発見された。いったいなぜ、何のために?そして密疑者には鉄壁のアリバイが…。“切り裂きジャック”が日本に甦ったかのような猟奇殺人に、名探偵・御手洗潔が挑む表題作ほか、横浜時代の御手洗が活躍する傑作中篇「山手の幽霊」も収録する。(裏表紙引用)
 
御手洗潔シリーズ第18弾。2作収録の中編集。
 
御手洗さん、引き続きスウェーデンからこんにちは(電話で)。切り裂きジャックというからどんなもんかと思っていたが、被害者が女性で腹を切り裂かれていた、ぐらいしか共通点はないな。通り魔とかじゃなく連続殺人でもないし。とはいえ、女優の死体移動という点や腹部に石が詰め込まれていたとか、暴行はしているのに殺害はしていないという容疑者(片方だけやるのは不可能)とか、島田さんらしい不可思議すぎる謎を提示してきてもうそれだけでワクワクする。ちょっと女優の人柄が古臭いのと、石岡くんの女性に対する偏見がすごくて時代を感じる。。開口一番「蛆だ君、蛆だ、蛆なんだよ!」と叫ぶ御手洗さんが一番面白かった。
 
「山手の幽霊」
山手の家の地下シェルターで、餓死した前住人が発見された。男はどうやって釘づけされたシェルターに入ったのか?その上、男は死んでいたはずの日に街中で目撃されており、根岸線の運転士が見た幽霊と光と絡んで謎が深まっていく――。
これまた奇想天外な事件。絶対不可能だろう、という状況でも理屈ですべてが明かされていくのがすごい。なぜ男はああなって叫ばなかったのか、だけが謎だが…。見つかってもいくらでも言い訳のきく状況のはず。説明あったっけ?あと、最後が犯人の手記?で長々終わったのは残念。まあ、御手洗さんは全て分かっていただろうけど。あと、石岡くん幽霊信じすぎ。ピュアか。かつて石岡くんが御手洗さんに「DNAってなんだい?」と聞いてしまい読者から励ましのおたよりや入門書が送られてきたくだりが笑える。。
 
以上。
ファンには「凡作」と評価されている作品のようだが、個人的には面白かったし好きだな。小難しいところがなかったし。御手洗さんと石岡くんのやり取りも昔のままっぽくて楽しかった。