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BUTTER  (ねこ3.5匹)

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柚木麻子著。新潮文庫

男たちの財産を奪い、殺害した容疑で逮捕された梶井真奈子。若くも美しくもない彼女がなぜ―。週刊誌記者の町田里佳は親友の伶子の助言をもとに梶井の面会を取り付ける。フェミニストとマーガリンを嫌悪する梶井は、里佳にあることを命じる。その日以来、欲望に忠実な梶井の言動に触れるたび、里佳の内面も外見も変貌し、伶子や恋人の誠らの運命をも変えてゆく。各紙誌絶賛の社会派長編。(裏表紙引用)
 
一時世間を騒がせた小〇早〇をモデルとした作品。どこまで本人に近いのかは分からないが、まあこれが丸々事実のわけはないのであくまで創作として読む。
 
男性週刊誌記者の里佳は、渦中の犯罪者梶井真奈子の独占インタビューを取ることに成功する。が、美しくはなく変わり者の梶井の弁舌にいつの間にか取り込まれ、梶井の心を開くために様々な美食に手を出すことになる。やがて里佳の体重は増え続け、恋人や親友を不安にさせてゆくが…。
 
うーん。どの登場人物も極端で、どの気持ちもよく分からない。女性に求められるものの厳しさと多さに切り込んではいるが、大きく間違ってはいないのになぜか素直に「そうだそうだ!」と共感できない小説だった。この小説で「適量」という言葉が多く用いられているのは、登場人物みんながそれを実践できていないからだろう。家庭的でふくよかな、男性を凌駕しない女性、バリバリ働き容姿もいいが生活スタイルが貧しい女性。どちらもそれぞれ好きなようにすればいいと思うが…。人間は自分のほうを肯定しなければ生きてはいけないのかもしれない。里佳も梶井もひたすら不器用に見えるのは、どちらも幸せには見えないからだろうと自分は思った。恋人の誠の「僕女性に理解があります」な態度も気に入らないし、親友怜子が被害者宅で暮らし始めたあたりはオイ正気かって感じ。あたたかい手作り料理が負担に感じる人もそりゃいるだろうし、丁寧に一から作りましたみたいな押し付けがましさは嫌だなあ。
 
里佳はじめ誠も怜子もいかにもこれから前進していくみたいな展開もちょっと…。ズレてる気がする。今まで人間関係を疎かにしていたツケって、自分自身が変わったからってそう簡単には払えないと思う。他人って自分の思い通りには動いてくれないから。七面鳥を焼くシーンはさすがにド迫力で圧倒されたが…。最後宗教に走ってるし。。事件も結局うやむやでなんだかな。最初はバター料理が美味しそうでひきこまれたけど、胸焼けしてしまった。
 
面白くないわけじゃないんだけど…かなり分厚い本だし、梶井と里佳たちが放つ負の感情と、躁状態みたいな陽の感情に振り回されてかなり疲れた。。小〇早〇の事件に興味があって、、って人には肩すかしな作品かも。