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鏡の中は日曜日/樒/榁  (ねこ3.8匹)

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殊能将之著。講談社文庫。

梵貝荘と呼ばれる法螺貝様の異形の館。マラルメを研究する館の主・瑞門龍司郎が主催する「火曜会」の夜、奇妙な殺人事件が発生する。事件は、名探偵の活躍により解決するが、年を経た後、再調査が現代の名探偵・石動戯作に持ち込まれる。時間を超え交錯する謎。まさに完璧な本格ミステリ。続編「樒/榁」を同時収録。(裏表紙引用)
 
平成ベストミステリにランクインしていたので今さらながら読んでみた。殊能さんの作品はなんだかんだ「キマイラ~」以外はこれで全部読んでいることになったので、折角だから読破しておこうかな。亡くなったことが本当に残念。ていうかなんだ?この帯。ビックリするわ。
 
第一章は、認知症患者の男のモノローグと回想のみで進行する。「ユキちゃん」と呼ばれる女性と、父親が同居している。ある日男の家を訪ねてきた探偵・石動を、男が撲殺してしまうという衝撃的な出だし。
第二章は、14年前に起きた、鎌倉にある梵貝荘の弁護士殺人事件を石動が調査する「現在」の章と、その事件をある人物の視点で記述する「過去」の章が交互に綴られる。
第一章と第二章に散りばめられた様々な仕掛けと伏線が最後にみるみる回収されていくという本格ミステリとしてはかなり凝りに凝った力作。翻弄されてなかなか面白かった。「ハサミ男」を描いた殊能さんらしい技巧かも。ちょっと現代で読むにはこの引っ掛けは古臭いなと思わなくもないし、事件のトリック自体は大したことはない。メインはあくまで記述のほうなのでアリなんだろう。
 
「樒」
講談社ノベルスで発行された「樒/榁」を同時収録ということでありがたい。石動シリーズの続編にあたる短篇が二篇。こちらの二篇をぜっっったいに後に読まないと「日曜日~」が全然面白くないのでご注意。
 
ミステリ作家鮎井郁介の「水城優臣シリーズ」未発表作品という体裁のよう。時系列的には「紅蓮荘事件」の二ヶ月前らしい。女子大生綾子の実家・香川県温泉郷へ出かけた水城と鮎井が巻き込まれた「天狗の斧」盗難事件とその斧による密室殺人事件。トリックはなんだこりゃな感じではあるが、それよりも、シュンちゃん……お、おまえ…(笑)。
 
「榁」
「樒」事件の何年も後のお話ぽい。「樒」に出てきた綾子さんが女将になってるし、ジロちゃんが綾子さんの夫になってる。飯七温泉へやって来た石動が体験した事件は昔起きた「樒」事件に酷似していて…。これまたたいしたトリックではないが、綾子さんが女将になって凄い嫌な感じになってしまって悲しかった。ていうか、シュンちゃんてアンタかい(笑)。
 
以上。
ちょっと薀蓄が読みづらかったりトリックがう~んなところもあるが、読み物としては変わっていてどれも面白かったと思う。「日曜日~」はやはり突出しているかな。石動あんま好きじゃないけど…。