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本バスめぐりん。  (ねこ3.8匹)

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大崎梢著。創元推理文庫

種川市の移動図書館「本バスめぐりん」。乗り込むのは六十五歳の新人運転手テルさんと図書館司書ウメちゃん、年の差四十のでこぼこコンビだ。返却本に挟まれた忘れ物や、秘密を抱えた利用者など、巡回先でふたりを待ち受けるのは、いくつもの不思議な謎?!書店員や編集者を主人公に「本の現場」を描いてきた著者による新たな舞台は、図書館バス!ハートフル・ミステリ短編集。(裏表紙引用)
 
久々の大崎さん。本絡みのシリーズ以外は読んでいないのだけど、ここでまた本にまつわるテーマの作品を見つけたので読んでみたー。移動図書館を扱った小説って初めて。ウチのたまに利用してる図書室(小学校内の図書室を一般にも開放してるとこ。週3回しか開いてない)の前の広場にいつも移動図書館バス停まってるから気になってるんだよね。開放してる感じだから利用してもいいのかもしれない…が、チキンなので聞けない(車のそばに人いないし)。
 
さておき。22歳のウメちゃんと65歳のテルちゃんコンビいいねえ~。ウメちゃんは本が好きで社交的で仕事も出来るんだけど、ちょっとおっちょこちょいで恋愛には引っ込み思案。元サラリーマンのテルちゃんは定年後やることがなくて、たまたま誘われた移動図書館のバスの運転手をやることに。サラリーマン時代の経験が生かせないことに焦りを抱きつつ、誠実に真面目に仕事と向き合おうとする。
 
色んな利用者がいるもんだねえ。さすがに現役世代の人は利用しにくいだろうけど。日にちが決められてて、平日午前~夕方の1時間しか居ないんじゃそりゃ利用出来る人は限られるか。作品内では近所の人とかが協力してたけど、現実だとわざわざそんなことしてくれるの普通は母親ぐらいじゃないのかい。でも本バスめぐりんの利用者たちは皆温かくて親切で、引っ越したばかりで地域になじめない少女や一人暮らしの中年女性、昔確執があった保育園にも優しい。最初は「母親はどうしたの」とか「あの人は一人暮らしよ」とかいちいち居ないところで人のプライバシー詮索するなよなあ、とか思ってたけど…現代人に足りないところはこういう部分なのかもしれない。もし、ウメちゃんみたいに自分の通ってる図書館や本屋で自分の好みそうな本をセレクトしておいてくれる司書さんや店員さんがいたら…一生通うわ。ありえないけど。3千冊しか置けない移動図書館ならではの気遣いだよね。いつも同じ本しかないんじゃ飽きるし。
 
好きだったのは中年女性寺沢さんが同じ本の趣味の利用者と触れ合う「テルさん、ウメちゃん」と、テルさんが特定の女性と親しすぎるというクレームを受ける「降っても晴れても」かな。
 
ミステリ的にはおとなしいし特別ドラマチックでもないけど、本を扱ったほのぼの人情系の小説はやはり面白いなと。ウメちゃんの恋の行方は?シリーズ化しないかな。してるのかな。