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Dの殺人事件、まことに恐ろしきは  (ねこ4匹)

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歌野晶午著。角川文庫。

長崎港を訪れた「私」は、ビデオ通話で恋人に風景を見せながら旅する奇妙な男と出会う。男に誘われた路面電車での観光の車中、「私」はその恋人が、人気アイドルのヴィーナスだと明かされる。だが、2人の馴れ初めを語る男の話には、明らかにおかしな点があり…(「スマホと旅する男」)。本格ミステリ界随一の騙しの達人が、江戸川乱歩の名作群を最先端テクノロジーでアップデートした、驚愕の翻案ミステリ短編集!(裏表紙引用)
 
歌野さんの、江戸川乱歩にオマージュを捧げた翻案ミステリ短篇集。乱歩再読したほうがいいかな?と思ったけど、タイトルを見たらだいたいのさわりは分かるものが多かったので必要なしと判断。元のタイトルは皆さん分かると思うので割愛。
 
「椅子? 人間!」
人気女流作家が昔共同執筆をしていた男に執拗にメール攻撃をされるお話。返信すんなよ、は置いといて。スマホ時代ならではの「人間椅子」トリックに驚愕。これからちょっとマッサージチェア座るのコワイかも。。
 
スマホと旅する男」
軍艦島へ一人旅に出ていた男が船で知り合ったのは、スマホで恋人とビデオ通話しながら旅行する男だった。。やらないけど実際こういうことを妄想する人種って居そうな気がする。。漫画とかにありそうだもん。こういうことだろうな、のその先が良かった。実際リアルに旅行していたのは誰だろうねえ。
 
「Dの殺人事件、まことに恐ろしきは」
調査員として浮気現場の撮影をしている男が、薬局で起きた女性絞殺事件に巻き込まれた。調査中に知り合った少年と事件を推理するが…。団子坂ならぬ道玄坂。これも現代的なトリック。被害者の趣味にビックリ、ラストのどんでん返しにまたビックリ。この少年、悪魔だねえ。やめてあげて…。
 
「「お勢登場」」を読んだ男
認知症の義理の父親の介護に疲れた男はある犯罪をもくろむが…。まあ悪いことをしようとする人間は悪いことをされるっていう。それも別角度から。。でも男の気持ちは分からんでもないので気の毒な気も。。これはスマホに詳しかろうと助からなかったのでは。。相手が一枚も二枚も上。でも私でも消防より先に旦那に電話してしまうだろうな。
 
「赤い部屋はいかにリフォームされたか?」
「赤い部屋」の舞台劇小説。これはもう何度ぐるぐる展開を引っくり返されたか。。なんだか「狼と少年」状態になってて、どれが嘘だかホントだか。パターンを繰り返しているようでいてそうでないオチがさすがだね。これが1番好きかも。
 
「陰獣幻戲」
高校の副校長をしている男には実は隠れた性癖があった。女性を性の対象以外の目では見れないのだ。そんな男が北欧系セレクトショップを経営する女性を見初めてしまうが、親しくなるうち彼女が脅迫メールに悩んでいることを知る。。マジで気持ち悪い男なのでザマミロな結末。女を下に見てると痛い目に遭うよねえ。現代は色々な方法があるから。。
 
「人でなしの恋からはじまる物語」
ヴァーチャルゲームにハマりすぎて夫を殺害してしまった女性。出所後姓を変えるために70代の老人と再婚した。やがて老人は、女性が服役中おまじないとして記していた言葉の暗号を解く。暗号がややこしすぎて読んでいられないが(解けるやつおらんやろ~これ。。暗号の意味をなさない。。)、その後に夫婦仲に少し変化があったのが良かった。しかしオチ、いきなり関係ない人が可哀想になってる(笑)。
 
以上。
乱歩に詳しくなくて大丈夫だと思う。「乱歩以上のオチ」と帯にあるが、前のものを超えなきゃいけないのは当然というか、だから大変というか。特に本書は現代風にデジタルをテーマにしたものばかりでそこが歌野さんらしい。しかも全作失敗してないし。うん、面白かった。