すべてが猫になる

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夜行  (ねこ3.7匹)

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森見登美彦著。小学館文庫。

十年前、同じ英会話スクールに通う僕たち六人の仲間は、連れだって鞍馬の火祭を見物にでかけ、その夜、長谷川さんは姿を消した。十年ぶりに皆で火祭に出かけることになったのは、誰ひとり彼女を忘れられなかったからだ。夜は、雨とともに更けてゆき、それぞれが旅先で出会った不思議な出来事を語り始める。尾道奥飛騨津軽天竜峡。僕たちは、全員が道中で岸田道生という銅版画家の描いた「夜行」という連作絵画を目にしていた。その絵は、永遠に続く夜を思わせた―。果たして、長谷川さんに再会できるだろうか。怪談×青春×ファンタジー、かつてない物語。直木賞&本屋大賞ダブルノミネート作品。 (裏表紙引用)
 
「ノミネート作品」ってことは獲ってはいないのね?(まあコレで獲られても複雑だけど)
 
モリミーの久々の幻想怪談小説。英会話スクールで懇意になったグループが10年ぶりに鞍馬の火祭へ赴くことになった。実は10年前、彼らの仲間である長谷川さんがその火祭で行方をくらませたのだ。再会した彼らは一人一人、自身の旅先で体験した物語を話し始める。そこには必ず長谷川さんの影が付きまとっていて――。
 
尾道奥飛騨津軽天竜峡と順番に旅の記憶が語られていくので叙情あふれる感じ。そしてそれぞれの話がとってもコワイ。最初え、モリミーでこんなコワイ話?と焦った。だって居ないはずの家の二階から人が覗いていたり、子どもの頃の友人がそのままの姿で現れたり、死んだのか消えたのか分からないまま終わったり。大抵が不思議なままゾワっとする終わり方をしていて、まるで夢の物語のよう。
 
最後は長谷川さんの謎が解けるのかと思ったら、どうやらそういうお話ではなかった。それぞれが語り終えてから、世界が反転するのだから。岸田は死んでない?大橋は本当に消えた??謎が謎のまま、正体不明の女の子を鍵にふわふわと進んでいく。どれが本当でどれが幻想なのか混乱しながら読み終えた。
 
消化不良感もあるけど、こういうちょっと怖くて不思議なお話のモリミーも悪くない。