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和気有町屋南部署 デカは死ななきゃ治らない  (ねこ3.7匹)

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滝田務雄著。徳間文庫。

目覚めたら、記憶がなかった。所持していた身分証では沖手範丞という名前で、刑事課課長らしい。部下に聞くと、ここ和気有町は、ぼくの曾祖父である名探偵が、犯罪に関わった人たちを集めて造った町。たしかに、ぼくにストーカーする巡査、対人恐怖症の刑事など、変なヤツらばかりだ。わけもわからぬ最中に一人の刑事が殺された…。犯人は誰だ?いや、そもそもぼくを殴ったのは、誰なんだ!(裏表紙引用)
 
五章に分割された、長編のような連作短篇ミステリー。滝田さんらしいユーモアを前面に出したおかしくも楽しい作品になっている。ふざけすぎとも言えるが。。
 
主人公は和気有町屋南部署(わけありまち やみなべしょ)の刑事課課長・沖手範丞。ある日沖手が目覚めると、知らない建物の土間だった。後頭部には鈍痛。どうやら自分は記憶を失ってしまったらしい。訳がわからないまま部下の幸嶋に聞いたところによると、現場は屋南部署の臨時建物。屋南部署は先日花火大会によって火事に巻き込まれ、自分は引っ越し作業の最中に何者かに襲撃されたようだ。やがて部下の虎鉄刑事がバールで殴打された死体で発見される。どう考えても犯人は刑事の中にいる!
 
おそらく設定を説明するために沖手を記憶喪失にしたのだろうと思う。。沖手の曽祖父が探偵社を起こし、身寄りのない被害者遺族、加害者家族、犯罪に関わった者、刑期を終えた犯人を社員として採用というめちゃくちゃな状況。さらに探偵社解散後、彼らを和気有署の警察官として採用するという逆天下り状態。そんなわけだから沖手の部下や上司は全員もれなく変態か変人か犯罪者という最悪の環境。。この刑事たちのキャラが立ちまくっているため、結構しっかりしたストーリーなのに影が薄くなってしまっている。。沖手の家に上がり込んだりパンダコスプレで仕事したりするストーカーの仁美巡査や、対人恐怖症でいつも天井裏やソファの中にいる鰻野刑事(しかも洋楽オタク)などなど。。怪盗サタン魔人が出てきた時には気を失いそうになった。。沖手もかなりのやり手だしツッコミの能力は高いし(笑)。
 
キャラクターの面白さが光っていてもうそれだけで面白い作品だが、推理ものとしても読めるし和気有町の暗部や歴史も結構深くて内容詰め込みまくり。これだけのページ数ではいい意味で物足りない、もっと一人ずつ掘り下げてもらうために続編が読みたい。でも、もうないんだろうなあ。。田舎の刑事シリーズ好きならオススメ。