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ハロワ!  (ねこ3.8匹)

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久保寺健彦著。集英社文庫

さまざまな事情を抱えた求職者たちが訪れる、ハローワーク宮台。沢田信は、民間の人材紹介会社から転職したばかりの新米就職相談員だ。慣れない業務に励む信を「指名」してやってくるのは、一癖も二癖もある求職者ばかり。理想が高くて尊大な元銀行マンに、面接を怖がるアラサー女子…。信は彼らの信頼を勝ち取ることができるのか?理想と現実の間で揺れる28歳男子の「お仕事探し」奮闘記。(裏表紙引用)
 
久保寺さんにハマリ中。今度はハローワークに勤める28歳の主人公・沢田信と求職者たちの奮闘を描いた物語。
 
リストラ騒ぎなどで転職を重ねてきた信は、かつて求職のために訪れたハローワークでスカウトされ、嘱託として相談員として働くことになった。最初は不慣れで成績はほぼ最下位続きだったが、信の誠実な対応が徐々に指名を増やして行く。。
 
現実の見えていない求職者たちが次々と信を指名しては翻弄してしまう。68歳の元配管工は上品なオフィスで事務員がやりたいの一点張り、元銀行員はリストラされたストレスを信たちにぶつけ無理難題をふっかけ土下座も要求、精神不安定な30代の女性は信に依存し自殺をほのめかす。人生を、就職を舐めまくってる人間たちに本当にイライラさせられたが、信が相手を思うあまり正直すぎるところは気に入った。不採用理由が「歯がない」とか「尊大」とか(笑)。でもそれぞれ「収まるべきところに収まらない」という変わった作品だったと思う。あれ、就職しないの?あれ、心入れ替えないの?みたいなパターンばっかり。これがリアルと言えばリアルなのかもしれないが、それに代わるべき物語としての奥行きもあまり感じられなかったかなと。信の対応は公務員の流儀にはそぐわなくても、自分だったら、この人が自分の相談員だったら就職出来るだろうなと思えた。自分はハローワークには人生で一度、失業保険の関係で通ったことがあるきりなので。でもまあこんな相談員いそうにないけど(偏見)。
 
あと、奈美との関係の進展にはビックリした。信は結構イケてる奴だということかな。最初「不倫じゃん」と思ってたんだけど、奈美のほうに事情があるのでまあ、人間、こういうこともあるよね。ああいう男と結婚してしまって子どものために別れられない人って気の毒だなあ。ラストの岸川の暴走には肝が冷えたけど、沢田ファンクラブの3人(笑)の活躍は良かったね。
 
もう一歩なところもあるけど、今のところハズレはないしこの作品も一気読みしたくなる面白さ。次はどれにしようかな。