すべてが猫になる

ヤフーブログからお引越し。

五覚堂の殺人 ~Burning Ship~  (ねこ3.8匹)

f:id:yukiaya1031jp:20190611163013j:plain

周木律著。講談社文庫。

放浪の数学者、十和田只人は美しき天才、善知鳥神に導かれ第三の館へ。そこで見せられたものは起きたばかりの事件の映像―それは五覚堂に閉じ込められた哲学者、志田幾郎の一族と警察庁キャリア、宮司司の妹、百合子を襲う連続密室殺人だった。「既に起きた」事件に十和田はどう挑むのか。館&理系ミステリ第三弾! (裏表紙引用)
 
十和田シリーズ第3弾。
 
今までで1番読みやすい。数学薀蓄が前作と比べかなり少なくなっている。だからと言って雰囲気が壊れていないのはさすが。
 
宮司警視正の妹・百合子は同級生である志田悟の帰省に同行することに。東北の某所にあるその建物は日本有数の哲学者志田幾郎のものであった。幾郎の死後、一族を集めて「二番目の遺言」が発表されたが、それは長男に遺産の八割を譲るという不当なものであった。さらに遺言には、この遺言発表後30時間は誰も外へ出てはならない、外部と連絡を取ってはいけないという決まりが。そして早速その夜、小礼拝堂にて密室殺人事件が起きるが――。
 
善知鳥神に見せられた事件終了後のビデオを元に推理をする十和田の章と、リアルタイム五覚堂の章が交互に語られる。リアルタイムのほうは割とあっさり進んでいくので推理に集中しろということかな。五覚堂が回転するという凄いヒントが最初に提示されているので、かなり大掛かりなトリックだというのは想像の範疇……だと思ったが思っていた何倍もスケールがでかかった。百合子が同行する必然性が弱い(悟の父親、同席してるし)とか一番目の事件を他殺だと見破る根拠が弱い、容疑者を排除していく理由にそれぞれ面白味がない、ス○○○が残っていたことを犯人は不都合に感じなかったのか?などなどちょっと気になる所はあるが、最後にすべての伏線が回収されて「ああ、だからだったのか」と膝を打つこともあり総じてなかなかのものかと。しつこいぐらいに親切に図解や人物表を挟んでくれるところも作者のマニアぶりがうかがえて良きかな。
 
でもやっぱちょっと金田一少年ぽいんだよなあ~。トリック+犯人も綾辻さんの○○館を彷彿とさせるし。こういうジャンルでお涙頂戴をやる小説はなかなかないから個性と言ってもいいかもしれないけど、シラけてしまうのはキャラクターに魅力がない(特に女性)ことと無関係ではなさそう。
 
でも善知鳥神とか色々気になるから続きも読む。