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扉は閉ざされたまま (ねこ2匹)

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石持浅海著。祥伝社ノン・ノベルス。


大学の同窓会。高級ペンションに集まった7人の男女。
伏見は、後輩の新山を浴室で殺害し、密室化した。
翌日、いつまでも現れない新山をメンバーは心配するが、
扉を開けようとするまでには至らない。
緻密な偽装工作は順調かに見えたが、メンバーの一人優佳が不審を抱く。
伏見と優佳の頭脳戦が始まった。


倒叙ミステリです。
本来、密室殺人というとまず何らかの方法で扉を開け、死体を発見するところから
始まりますが、本作はタイトル通り「扉は閉ざされたまま」ストーリーが進行します。
設定が毎度ながら奇抜で楽しみなのですが、「月の扉」で指摘した問題点が改善されて
いませんね^^;。

この作家、人物描写をしない方が良いと本気で思うのですが。
人物がステロタイプで秀逸なミステリは山程あるじゃないか、と叱られるかもしれませんが、
著者の場合、「描こう」としているので鼻につくというか。
「靴が館内にあるから外出していない。」
当たり前だ!!!!!!(キレた)
それで「問題提起」とか言われても!!そういうエピソードを集めて「明晰な頭脳」という
表現はいかがなものか。
実際事件を状況だけで(死体も出てないのに)解決するんですから確かに優秀なんですがね。

優佳さん。このラストは人間として恥ずべきでは。
人格者ぶる気はありませんが、自分はこういう人間を「頭がいい」と思うことができません。
推理攻防中のくだりでは、人道に適った発言をしておきながら???
こういうところが、著者が「人間が描けていない」と評価される由縁では。
いやいやこれは斬新だ、と捉えるには文章力不足な感が否めません。

動機も、材料は良いのだからもう少し掘り下げて欲しかった。犯人(伏見)自身あるいは
身内、恋人の身に実際に被害が、とかね。


倒叙ミステリーとしては、穴もなく(メンバーの心理に若干違和感を感じるものの)
佳作といっていいのではないでしょうか。
扉を開けられない理由が理に適っていますし、心理戦として読むなら
かなり楽しめるはずです。
こういう発想ってあまりよそでは見られないですし、成功している部類だと思います。