すべてが猫になる

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記憶の果て (ねこ3.9匹)

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浦賀和宏著。第5回受賞作。


父の自殺。彼の残したパソコンの中には、自ら「裕子」と名乗る少女が存在していた。
プログラムに意識は宿るのか?一体彼女は何者なのか??


冒頭から「親父が死んだ。自殺だった。」という突飛な書き出しで物語は始まります。
そして、パソコンによる「裕子」と主人公の少年、直樹との会話といういささか
現代ホラー的な、若しくはアクロバット的な展開で読者を軌道に乗せて行く、という感じ。
軽音部のコンテストで知り合った少女との恋愛もからんで、さてその全てをどう収束して
行くのかーーーーー。

むむ?
最初の印象こそ「うーん、井上夢人の不思議な世界」でしたが(怒られるか^^;)、
読者に提示されている謎そのものははっきりしているので抵抗はなし。
(井上氏のように「何がわからないのかがわからない」種類とはまた一線をひいたもの、
という感じかな)
但し、ミステリーというよりは主人公の精神論小説。
なのに、一貫して無機質な生命力のない世界観。
主人公に課せられた様々な困難、宿命に対して感情移入できないのはそれゆえかしら。

場面転換は数あれど、一本調子で読み手の景色が変わって行かないのは
構成のシンプルさと終始「俺は、俺は」という主人公の一人称一本槍で通してしまったからかな。


おいおい、ここまでひっぱって結局ドラえもんオチか!?と危惧させられましたが
まあこれなら許容範囲。
しかし、この1作だけではこの物語を咀嚼できないのは事実。
他作に期待いたしましょう。(というわけで楽しみが減るからあとがきを読んでいない)

個人的には、とても面白かったということで。(そうだったのか^^;)