すべてが猫になる

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月長石の魔犬 (ねこ0.8匹)

秋月涼介著。第20回受賞作。


正常と異常のボーダーラインと、頭部を切断され犬の首を縫い付けられた死体の謎。
……って感じですか。

最近ではよくあるテーマ。(犬の首はともかく)
文章はそんなに悪くはないです。(と、思う)
構成も、普通。章ごとにそれぞれの主要登場人物の一人称となっています。それゆえ、
心理描写はなかなか緻密で、まるで体験者のごとくリアル。
特に、五大欲が生まれつき備わっていない少女の心理描写は見事で、
引き込まれました。


面白いと思ったんですよ、最初は。かなりね。
「おお、メフィスト賞ベスト5に入るか!?入るのか!?」と思ったほどにね。

中盤から、ごく普通のミステリに変貌。しかも、サスペンス寄りの。
捜査を担当する刑事達、なんでこんな設定にしちゃったのかなあ。
冴葉さんとかも、なんで女性にしちゃったのかなあ。こういう「イジられ」キャラを
女性にしてしまうと、笑えないんですよね。「哀れ」な印象を持ってしまいます。

犬の首を縫い付けた理由も、犯人の正体も、「先生」のトリックも、
これが本当にプロ作家?というほどのレベル。(デビュー作だが)

最初の面白さゆえ期待過剰だった感もありますが、いくらなんでもこれは……
もう少しどうにかできなかったんでしょうか。

トリックや論理が甘いなら、たとえ少数の読者にでも納得させるだけの世界観を
貫くべき。崩壊でも不条理でも不思議でもなく、ただばたばた終わらせちゃったねえ、
としか思えませんでしたわ。。

ああ、残念。。。