創元推理文庫。初のデビュー長編です。
夏合宿のために矢吹山のキャンプ場へやって来たアリスら推理小説研究会一行。
偶然一緒になった雄林大学、神南学院短大のグループらと意気投合し、行動を
共にする。しかし、彼らに予想だにしない事態が起こる。矢吹山の噴火、連続殺人ーー。
犯人は誰?残された「Y」の意味は?
本格ミステリファンの大好物、「読者への挑戦」が挿入された完全本格推理です。
登場人物の多さ(つまり容疑者の多さ)、噴火により密閉空間となった現場で起きる
殺人、ダイイングメッセージ(写真挿入でリアル)、これぞ本格ミステリの醍醐味。
アリスの若さにびっくりしましたが(あ、そうか、この時まだ火村さんいないんでした)、
いいですねえ。純愛もありで。友情もありで。
この作家の書く人間はどうしても好きです。人間の弱さ、哀しさを描ききってます。
肝心の謎解きですが。
犯人の正体。この人物が犯人である理屈、そしてこの人物以外の人間が犯人でない
理由(コレ必須だと思っている私)、無理がなくて良かった。
犯行方法。この人物=犯人、というロジックとうまく結びついていた。これも良い。
ダイイングメッセージ。こ れ は ダ メ!いらない。盛り上げたわりに
かなり苦しい。副題にこだわりたかったのかな。
動機。アリスですら「そんなことで!?」という発言をしているので
敢えてぐちぐち言いませんが…………。
全体的にはまあ佳作と言っていいのではないでしょうか。
期待しすぎたため、辛口となっていてすいません。