すべてが猫になる

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空を見上げる古い歌を口ずさむ (ねこ3.4匹)

小路幸也著。講談社。第29回受賞作。

主人公の青年が、20年ぶりに兄と再会。
その兄のモノローグでほぼ占められた作品です。
兄の小学生時代の物語。ある「パルプ町」という土地で暮らす兄は、突然、全ての人々の顔が「のっぺらぼう」に見え始めた。そして、町の人々ーーお巡りさんー一人暮らしの老婆ーが
次々と死んで行く。。。

ーーーというとなんだか怪奇小説みたいですが、まっったくホラー要素はありません。
あるのは「のっぺらぼう」と町民の死の謎のみで、全体的に「ほのぼの」した雰囲気を持つ
作品。

メフィスト賞にしては珍しく、真っ向から勝負してきたなという感じ。
人は死にまくるんですが殺人事件!捜査!という毛色はなく、小学生の一人称という視点で
終始描かれているのでなんだかファンタジーみたいですね。

正直、読みやすいだけで世界が不明瞭だな、と思っていました。が。
ラストで解き明かされる「謎」の真相、ここまで来てやっとテーマが見えて来ました。
変わってはいる、だけど単純明快。リアリティ度ゼロですが、風刺的な要素が含まれているため
「なんのこっちゃ」という着地ではありません。

お子様に読ませてもいいかも。