すべてが猫になる

ヤフーブログからお引越し。

どこまでも食いついて/Gator Bait  (ねこ3.8匹)

ジャナ・デリオン著。島村浩子訳。創元推理文庫

保安官助手カーターとの初デートを成功させたフォーチュンのもとに、アイダ・ベルとガーティの宿敵シーリアが町長に立候補したとの報が入る。三人が当選阻止に動こうとした矢先、なんとカーターが何かに狙撃されてしまう。命は助かったものの、彼は病院行きに……。お目付役のいないフォーチュンたちが、犯人をさがして町を史上最大の混乱に陥れる〈ワニ町〉シリーズ第五弾!(裏表紙引用)
 
創元モノで今1番ハマっている<ワニ町>シリーズ第5弾。
 
前回、フォーチュンとカーターがついにデートで大団円を迎えたそのつづき…ということで鼻息荒く読み始めたけれど。カーター、銃撃されて水底に沈んじゃってます。。そこをフォーチュンが颯爽と助けたわけだけど、おかげでアツアツムードがリセットされちゃった感じ。湿地三人組が大暴れしているところにカーターが乗り込んできて「お前ら何やってんだーーー」ってなるお約束のシーンが大好きなので、今回それがなかったのが残念。とうとうフォーチュンが司書じゃないってのバレるか?って期待したけれど、これはどうなんだろうね?次巻かな。でも、カーターのお母さんに気に入られたのは良かった、雨降って地固まるてきな。。
 
今回のおばあちゃんコンビも大活躍。ガーティの迷彩柄下着…み、見たくない……。。表紙はマフィアに殺されかけてるあのシーンぽいけど、アイダ・ベルすごい服着てるね。。まだまだご顕在のようで。アクションシーンはいつも以上にスリリングで楽しかった。とりあえず6巻までは刊行決定のようなので安心。

映画を早送りで観る人たち ファスト映画・ネタバレ――コンテンツ消費の現在形  (ねこ4匹)

田豊史著。光文社新書Kindle)。

現代社会のパンドラの箱を開ける! なぜ映画や映像を早送り再生しながら観る人がいるのか――。 なんのために? それで作品を味わったといえるのか? 著者の大きな違和感と疑問から始まった取材は、 やがてそうせざるを得ない切実さがこの社会を覆っているという 事実に突き当たる。一体何がそうした視聴スタイルを生んだのか? いま映像や出版コンテンツはどのように受容されているのか? あまりに巨大すぎる消費社会の実態をあぶり出す意欲作。(紹介文引用)
 
興味のある題材だったので、電子書籍でちびちび読破。
内容はタイトルの通りで、Z世代と呼ばれる若者の中には映画やドラマを倍速で観る習慣を持っている者が多くいるという。あくまでその経験がある、という者も含む。ファスト映画という「数分で映画のいいところをつなぎ合わせてストーリーを把握できる映像」が流行った(もちろん違法)のも記憶に新しい限りだ。
 
個人的な話だが、40代の自分だってYouTubeを10秒飛ばししたり観たいところだけ観るなんてことはよくやる。チャンネル登録しているタレントや旅チャンネル、お笑いネタのものは絶対にやらないが、たとえばクッキング動画やストレッチ動画、日常の暮らし系なんかは観たいところだけ観る。大きな声では言えないが、年に1、2度くらいは映画があまりにつまらなかった場合(字幕に限るが)「早送り1」で残りの30分を観る、なんてことは割とやってしまうタイプだ。映画や監督への冒涜とか言われそうだがしゃらくさい。
 
それと似たようなもんかな?若者に限らないんじゃないの?と思って別にマウント取るつもりもなく読んでみたが、どうやら一部の若者にとって映画やドラマを倍速視聴する理由はちょっと違うらしい。サブスクの隆盛もあってとにかく彼らには膨大な作品を堪能する時間が足りない。だけど流行りにはついていきたい。ハズしたくない。だからネタバレを観てから安心して最初から観る。心を乱されたくない。最短距離でオタクになりたい。何者かになりたい。この本ではどうして今の若者がそうなったのかも具体的に記してくれているので、読みでがあるとしたらそこかな。
 
私は製作側の人間ではないので人に迷惑をかけなければ勝手にどうぞ、という感じだが、その一瞬で流れていくLINEグループの会話についていくために映画やドラマ、音楽を消費し、倍速視聴によって2時間の映画が1時間で観れた、タイパがいいと喜ぶ感覚にはどうも馴染めなかった。趣味ぐらい、人に合わせずに自分で好きなものを選んで自分の感想を持とうよ。

 

栞と嘘の季節  (ねこ3.9匹)

米澤穂信著。集英社

ベストセラー『本と鍵の季節』(図書委員シリーズ)待望の続編! 直木賞受賞第一作 猛毒の栞をめぐる、幾重もの噓。 高校で図書委員を務める堀川次郎と松倉詩門。 ある放課後、図書室の返却本の中に押し花の栞が挟まっているのに気づく。 小さくかわいらしいその花は――猛毒のトリカブトだった。 持ち主を捜す中で、ふたりは校舎裏でトリカブトが栽培されているのを発見する。 そして、ついに男性教師が中毒で救急搬送されてしまった。 誰が教師を殺そうとしたのか。次は誰が狙われるのか……。 「その栞は自分のものだ」と噓をついて近づいてきた同学年の女子・瀬野とともに、ふたりは真相を追う。 直木賞受賞第一作は、著者の原点とも言える青春ミステリ長編! (紹介文引用)
 
高校二年生の図書委員、堀川と松倉コンビが帰ってきた。ということで第2弾、わーい。今回は、長篇。
 
返却された本に挟まっていた押し花の栞。手作りらしきその栞に使われていた花が猛毒のトリカブトだと分かった堀川たちは、図書室に栞の持ち主が名乗り出る旨を記し掲示した。やがて持ち主だという瀬野という女子生徒が現れる。栞はかつて自分がブックカフェで配布するために作ったものだという。そして嫌われ者の生活指導教師・横瀬がなんらかの中毒で倒れ――。
 
毒自体はたいへんなものだが、随分と小さい謎にページ数をかけるんだな、と。実際は大きな問題が渦を巻いていたわけだが。タイトルにもあるように、主要人物らも含めて小さな嘘を積み重ねていくので、その時々のネタバラシが面白い。特に松倉の謎にはビックリだし、堀川の嘘は図書委員の矜持を感じさせて好感がもてた。
 
内容は暗めながらも高校生の持つ悩みや問題ばかりで、ホノブ作品っぽい。10代の心情を描いた物語に違和感なくついていける作家さんってあまりいないのだけど、ホノブの文章力語彙力はそれを可能にするなあと。若いね、青いね、じゃなくて子どもの無力さや繊細さが身にしみる作品だったなあ。ミステリー的には丁寧でまあまあかな。

殺しへのライン/A Line to Kill  (ねこ4.3匹)

アンソニーホロヴィッツ著。山田蘭訳。創元推理文庫

『メインテーマは殺人』の刊行まであと3ヵ月。プロモーションとして、探偵ダニエル・ホーソーンとわたし、作家のアンソニーホロヴィッツは、初めて開催される文芸フェスに参加するため、チャンネル諸島オルダニー島を訪れた。どことなく不穏な雰囲気が漂っていたところ、文芸フェスの関係者のひとりが死体で発見される。椅子に手足をテープで固定されていたが、なぜか右手だけは自由なままで……。年末ミステリランキング完全制覇の『メインテーマは殺人』『その裁きは死』に続く、ホーソーンホロヴィッツシリーズ最新刊!(裏表紙引用)
 
ホーソーン&ホロヴィッツシリーズ第3弾。
(参考までに。「カササギ殺人事件」のシリーズではありません)
 
「メインテーマは殺人」の刊行に先立って、オルダニー島で開催される文芸フェスの参加を決めたホロヴィッツホーソーン(むりくり)。多種多様な参加者が集う中、オルダニー島ではある送電線計画について反対派と賛成派で派閥が起きていた。不穏な雰囲気の中、文芸フェス主催者の夫が椅子に縛られ右手だけをそのままにした状態で殺害された。その後、妻も他殺死体で発見され…。
 
殺人事件の謎解きものとしても読み応えがあったのは言うまでもないが、登場人物を取り巻くいざこざのドラマやホーソーンと確執のあるアボットの存在が物語の肝だった。どの人物をとってみても怪しくない者はおらず、それぞれの職業に思い思いのウラがあった。正義マンとしては一癖も二癖もあるホーソーンの解決方法はやはりひねくれていて、読者としてもホロヴィッツから見ても「これで正しいのか?」と思わせるあたりがにくい。ホーソーンが犯罪者に手をかけている可能性を残し、ワトスン役のホロヴィッツの中にくすぶる不信感やいらだちが目立ち始めた。仲良しこよしの探偵コンビもいいが、こういう歪な関係性もまた本格探偵ものだけが持つ強みだろう。
 
大きな期待をかけなかったせいか、シリーズキャラとしての愛着が増したか、シリーズ中1番良かった。
さてホーソーンのリースの秘密とは。。息子との関係は。。早く続きが読みたい。

シーソーモンスター  (ねこ3.7匹)

伊坂幸太郎著。中公文庫。

バブルに沸く昭和後期。一見、平凡な家庭の北山家では、元情報員の妻宮子が姑セツと熾烈な争いを繰り広げていた。(「シーソーモンスター」) アナログに回帰した近未来。配達人の水戸は、一通の手紙をきっかけに、ある事件に巻き込まれ、因縁の相手檜山に追われる。(「スピンモンスター」) 時空を超えて繋がる二つの物語。「運命」は、変えることができるのか――。創作秘話を明かすあとがき収録。(裏表紙引用)
 
8人の作家が、「共通ルールを決めて、原始から未来までの歴史物語をいっせいに書く」という螺旋プロジェクトの1冊。たまたま以前薬丸岳さんの「蒼色の大地」を読んだことがあるので、なんとなく主旨は理解。前述した作品がそれほど面白いと思えなかったのと海族と山族がお互いに対立しあう内容とかあまり興味を持てないので説明はこんな感じで終わり。プロジェクトを理解していなくてもなんの問題もなく読める作品ばかりなのでご安心を。順番に全部読めば違う発見もあるんだろうけどね。なんせ題材がゴニョゴニョ。
 
「シーソーモンスター」
時代はバブル、昭和後期。製薬会社に勤める北山の家庭では、同居する母親と妻との<嫁姑戦争>に頭を悩ませていた。実は元情報員の妻が巻き込まれたある大事件。
嫁姑問題を良くも悪くも進行させながら、現役ばりのスパイ活動を余儀なくされる妻。家に殺し屋って^^;姑のほうにも秘密があって、力を合わせて夫、息子のために大暴れする2人がなんだか良かった。大団円にならないあたりもまた。
 
「スピンモンスター」
近未来。世界はアナログに回帰し、郵便配達員の水戸は世間を震撼させる大事件の容疑者とみなされ追われることになった。水戸を追う警察官・檜山は水戸の因縁の相手で、彼らは子ども時代に2人同時に家族を全て失っている。水戸は追っ手から逃れながら、人工知能ウェレカセリの暴走を止めなければならない――。
音楽グループγモコとか人工知能とか、色々噛み合わさってよく分からなかった。。絵本作家のあの人が出てきたりヒナタさんの正体が謎だったり、そういう小ネタは楽しめたが。
 
 
2作の中編集ってことでいいのかな。
読みやすく面白いのだけど、いつもの伊坂作品に比べてちょっと物足りなさが。。特に2編目なんてだからどうしたって感じ。テーマが枷になってたんじゃないかなあ。海族山族とか、いかにも伊坂さんらしい感じだけども。~~縛りっていうのも難しいもんだね。
 

巨大幽霊マンモス事件  (ねこ3.9匹)

二階堂黎人著。講談社文庫。

ロシア革命から数年経ったシベリア奥地。逃亡貴族たちが身を隠す<死の谷>と呼ばれた辺境へ秘密裏に物資を運ぶ<商隊>と呼ばれる一団がいた。その命知らずな彼らさえも、恐怖に陥る事件が発生! 未知なる殺人鬼の執拗な追跡、連続する密室殺人、<死の谷>に甦った巨大マンモス……。常識を超えた不可解な未解決事件を名探偵・二階堂蘭子が鮮やかに解き明かす!(裏表紙引用)
 
二階堂蘭子シリーズ第12弾。
「ユリ迷宮」に収録されていた「ロシア館の謎」の続編と考えるのもアリらしい。覚えてないけど。
 
本作は蘭子ら<殺人芸術会>がシュペア少尉の出題した事件を考察し合う「現代」の章と、シュペア少尉がセルゲイ・エフルーシという偽名で体験したシベリア南部<死の谷>連続殺人事件をシュペアと商隊長ルカ・フロローフの日記で交互に綴る1920年代の章におおまかに分かれている。ややこしいが。。めっちゃ簡単に言うとそうなる。
 
バイカル湖の北方にある<死の谷>の奥には金銀財宝が眠っているとされ、ロマノフ家のマンモスがそれを守っているという言い伝えがある。諜報部上官ハンスは、ドイツ人スパイのシュペア少尉を死の谷へ送り込んだ。しかしシュペア少尉とアナスタシア皇女はひっそり愛し合っている。シュペアが潜り込んだ物資の運搬グループ隊長フロローフも妻をカバノフ将軍に奪われており、運搬のどさくさに裏切る予定であった。
そして道中、白軍の中継所や死の谷で密室連続殺人が起きる。あちこちで出現する幽霊マンモスの正体とは?そしてラスプーチンが抱えている予言者の女たちは何を見たのか?
 
メモを必死でとりながら読んだのでなんとか概要は理解しつつ、手記の章に入ってからはあまりの面白さにサクサクと。謎の溶液の中に入っている三人の女も不気味だけど、魔女の館で出会った奇形の少女たちの存在がとっても魅力的。近頃はあまりこういう島田荘司的というか江戸川乱歩的なミステリーがないので、このシリーズの存在は貴重だと思う。トリックがアレでなければもっと良かったが。。。アンフェアではないけど、タブーを使っちゃったな。それでもよくできた仕掛けだとは思うけれど。マンモスの正体については、意外とそのまんまというか。島田さんならもっと驚く真相描けたろうにな。。
 
まあとは言え苦手な蘭子はあまり出ないのでイライラしないし、壮大で楽しめる作品かと。

QED 憂曇華の時  (ねこ3.7匹)

高田崇史著。講談社文庫。

安曇野穂高天祖神社の夏祭り直前に神楽衆の舞い手が怪死する。遺体の耳は削がれ、「S」の血文字が残されていた。数日後、二人目の被害者が。鵜飼見物に石和を訪れていた桑原崇と棚旗奈々は、友人・小松崎からの電話で事件に巻き込まれる。古代海人・安曇族が移住したという地で起きた哀しい事件の因果。(裏表紙引用)
 
QEDシリーズ第21弾。たぶん。
 
このシリーズ、タタルと奈々ちゃんが結婚でもしない限りこれ以外の点数付けようがないというかなんというか。相変わらずタタルの薀蓄はどこまでも凄まじく、事件のほうは付け足し感ばりばり。今回は女系天皇の話や地名人名の字の置き換えなど、まあまあ興味を持てるものをテーマにしていたのでマシだったかな。。分からないところは分からないが。事件のほうは昭和の2時間サスペンスみたいな内容で苦笑。
 
しかし、この2人はやっぱり付き合ってるの?付き合ってないの?奈々ちゃんがタタルの手を握るシーンがあったけど。。タタルも次の旅、奈々ちゃんを普通に当たり前に誘ってるし。奈々ちゃんが一回ハッキリ聞けばしまいだと思うんだけどなあ。でも「いいかね奈々くん、男女の交際というものは日本書紀によると…」とかうだうだ話逸らして語られそうだな。。