すべてが猫になる

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追憶の夜想曲  (ねこ4.4匹)

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 中山七里著。講談社

豪腕ながらも、依頼人に高額報酬を要求する“悪辣弁護士”御子柴礼司(みこしばれいじ)は、 夫殺しの容疑で懲役十六年の判決を受けた主婦の弁護を突如、希望する。 対する検事は因縁の相手、岬恭平(みさききょうへい)。 御子柴は、なぜ主婦の弁護をしたのか? そして第二審の行方は?「王様のブランチ」「ダ・ヴィンチ」などで話題沸騰! 『贖罪の奏鳴曲(ソナタ)』の続編!!(紹介文引用)
 
すっかりハマってしまった御子柴シリーズ第2弾。
 
いや~~これも面白かった!!1作目を超えることはないかな?と思って読み始めたのだけど、1作目と変わらずラストの怒涛のどんでん返しと御子柴のある行動にビックリが止まらない。
 
無事退院した御子柴は、前の事件での意趣返しとして宝来が担当している夫殺し事件の弁護を譲ってもらう。主婦がパート先で出会った男との再婚を目当てに無職のDV夫を殺害し懲役16年を求刑される。一般家庭の主婦が起こした単純な事件で、およそ守銭奴の御子柴が相手にするような案件ではないはずだった。果たして御子柴の真の狙いは?被告人は何を隠蔽しているのか?
 
今回は一つの事件だけを追うストーリーなので読みやすかった。たとえどんな夫でも普通なら殺すという選択肢はないと思うので被告人に肩入れ出来ない内容だったが、読み進むにつれ事件の本当の姿が明らかになった。最初に明かされた事実は予想の範囲内かもしれないが、その事実に付随する、一つの家庭の歪んだ実態に衝撃を受けた。被害者にとってそれが最善だったと言う気はないし、何が正解かは分からない。が、登場人物それぞれが、歪んだ家庭環境にさえなければそういう風には人格形成されなかったであろう、と思うと哀れだし、悪意の根源はどこまで遡ればいいのだろうという話になる。真実が暴かれたところで虚しさだけが残るイヤな事件だ。
 
そして御子柴の決断にも震えた。このシリーズ全体を通して、贖罪がテーマとなっているのだろうか?これまた御子柴の行動が最善なのか答えは出ないが、これからの弁護士人生、御子柴はどうなってゆくのだろう?とても興味深い。
 
全体を通して暗く陰鬱な作品だが、被告人の娘・倫子ちゃんの存在が癒しになった。子どもが苦手な御子柴にまとわりつく6歳の天使。彼女の人生も今後は暗いものになるだろうが、今だけは屈託なく笑っていて欲しい。

地べたを旅立つ 掃除機探偵の推理と冒険  (ねこ3.5匹)

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そえだ信著。早川書房

鈴木勢太、性別男、33歳。未婚だが小学5年生の子持ち。北海道札幌方面西方警察署刑事課勤務……のはずが、暴走車に撥ねられ、次に気づいたときには……「スマートスピーカー機能付きロボット掃除機」になっていた! しかもすぐ隣の部屋には何故か中年男性の死体が。どんなに信じられない状況でも、勢太には諦められない理由があった。亡き姉の忘れ形見として引き取った姪・朱麗のことだ。朱麗の義父だった賀治野は、姉と朱麗に暴力を働き接近禁止命令が出ていたが、勢太がそばを離れたとわかったら朱麗を取り戻しにやってくる。勢太の目覚めた札幌から朱麗のいる小樽まで約30キロ。掃除機の機能を駆使した勢太の大いなる旅が始まる。だが、行く手にたちはだかる壁、ドア、段差! 自転車、子ども、老人! そして見つけた死体と、賀治野と、姉の死の謎! 次々に襲い掛かる難問を解決して小樽に辿り着き、勢太は朱麗を守ることができるのか。 第10回アガサ・クリスティー賞大賞に輝く、選考委員たちがその卓越したアイデアに驚愕した掃除機ミステリ登場!(紹介文引用)
 
初・そえだ信さん。ネットで偶然見て、なんか好みそうだったので読んでみた。結果は、う、うーん。。。びみょう。。冒頭、覚醒してから自覚して決意して自分の機能を一つ一つ確認して、、って感じなので、こりゃ出くわした殺人事件調査や冒険が始まるまでかーなーりー時間がかかるぞ……。で、やっぱりその通りで相当じれったい。文章も面白みがあまりないというか、退屈というか。。読んでは休んで読んでは休んで、他の本も読んで、、って感じでようよう読み終わった。。
 
掃除機(ルンバのようなやつ)に意識が宿って探偵をする、っていう設定は良かったし、意識の主である主人公の勢太もなかなかいい男だと思う。実の娘ではない女の子を引き取って愛情深く育てていたり、警察官らしい正義感や熱意に溢れていたり。掃除機になっても諦めず、DVで接近禁止命令が出ている娘の父親から守ろうと奮闘する姿はなかなかに熱いものがある。この小説のために付けた機能、って感じがするのはしょうがないが。。旅の途中で、幼児に拾われたり、自転車に撥ねられたり、老婆にお持ち帰りされたり、そしてそのそれぞれに色々なエピソードがあって、まあ実際そこが一番面白かったんじゃないかなと。。他人をほっとけない性分の勢太だからこそ。そこに力が入りすぎててメインで進行しているはずの「DV父から娘を守れ!」にあまり緊迫感がなかったのは難点かな。面白いところと退屈なところが極端。
 
うーん、悪くはなかったのだが…正直、あらすじが一番面白かった。。期待したんだけどなあ。残念。
 
 

動機、そして沈黙  (ねこ3.5匹)

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西澤保彦著。中公文庫。

時効まで二時間となった猟奇犯罪「平成の切り裂きジャック」事件を、ベテラン刑事が回想する。妻と戯れに推論を重ねるうち、恐ろしい仮説が立ち上がってきて…。表題作ほか、妄執、エロス、フェティシズムに爛れた人間の内面を、精緻なロジックでさらけだす全六作品。(裏表紙引用)
 
西澤さんの、動機に焦点をあてたミステリ短編集。「そして沈黙」が表す通り、事件の真相は曖昧なまま、というお話が多いかな。モヤっとはするものの、どれもなかなか刺激的で面白い。
 
「ぼくが彼女にしたこと」
近所に住んでいた、憧れのお姉さんが自分の父親と不倫していることを知った少年は、その不倫現場を覗くことに意義を見出していた。しかしその現場をクロイシアキラと名乗る隣人に目撃され、なぜか交換殺人の約束を交わすことに。子どもを巻き込むことがこのお話を倒錯的なものにしている気がする。現実味はないが、最後の少年の気持ちの暴露といいスーっと胸が冷たくなるようなお話。
 
「迷い込んだ死神」
車のガス欠により、ある洋館に助けを求めた男は、家人の厚意によって家の中へ招き入れられた。そこには主人と妻、2人の美しい娘がいた。しかしこの家族、なにかがおかしい。この家族は被害者だけど、心に闇を抱えた人間と知らずに接したのが何より不幸だったのかと。怖いね。
 
「未開封
静香という名前の女性ばかりを狙った連続殺人事件。未開封の〇Vだからこそ興奮する、とかいう趣味?フェチ?もしんどいけど、どっちがストーリーの中心だったかを考えたらレズビアンなんだろうなあ。。ザ・西澤エロワールド。
 
「死に損」
13年の時を経て、再び出会った人々がそれぞれの運命を決める。恨みの深さなんていう単純なものじゃなくて、もっと人間の心理は複雑なのかも。ちょっとしたことが引き金になることもある。登場人物全員が性的に倒錯していてこれまたしんどい。
 
「九のつく歳」
長い交際の果て、別れることが決まった同性カップル。その引越し準備の日、警察がある殺人事件のことで訪問してきたが…。全然関係ない事件かと思いきや、主人公と繋がっていく展開が見事だなと。こういうのうまいよね、西澤さん。
 
「動機、そして沈黙」
来年定年の刑事が、妻と語り合った切り裂きジャック未解決事件。妻の推理遊びは次第に熱を帯びていくが…。強引すぎるし本当だったらとてもまともとは思えない犯人。。ラストの刑事の妄想は果たして真実なのか。
 
以上。
相変わらずのエロ、倒錯、アブノーマルネタで疲れるが、最後まで読まずにいられない面白さも相変わらず。リアリティはないかなあ。。登場人物の思考も行動も独特だけど、これこそ西澤作品にしかない色という感じ。

おやすみ人面瘡  (ねこ4匹)

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白井智之著。角川書店

全身に“脳瘤”と呼ばれる“顔”が発症する奇病“人瘤病”が蔓延した日本。人瘤病患者は「間引かれる人」を意味する「人間」という蔑称で呼ばれ、その処遇は日本全土で大きな問題となっていた。そんな中、かつて人瘤病の感染爆発があった海晴市で殺人事件が起きる。墓地の管理施設で人瘤病患者の顔が潰され、地下室では少女が全身を殴打され殺されていたのだ。容疑者は4人の中学生。さらに、事件の真相を見抜いた男は、逆上した容疑者のひとりに突き飛ばされ、机の角で頭を打って死亡してしまった……かと思いきや、死んだはずの探偵の身体に発症した、いくつもの“顔”が喋り始め――。(紹介文引用)
 
初・白井さん。
どれが良いか分からなかったので、とりあえずランキングにも入っていて開架に並んでいたこちらを。
 
いやあ、なんか想像していた以上に凄かった…。15年前、日本で感染爆発した「人瘤病」。感染者は全身に人面瘡が現れ、悪性の場合精神は破壊、さらに肉体が死んでもなお人面瘡は生き続ける。女性患者は「人間(にんげん)ヘルス」と呼ばれる人瘤病患者専門風俗店で風俗嬢として働かされる。政府は、患者から身を守るために人瘤病患者を傷つけた場合、罪には問わない法案が議決。
 
なんか書いててイヤになるけど汗、うーん、設定はこんな感じかな。もちろん登場人物もあまり普通の感覚はしておらず、教師が妊娠した生徒をリンチしたり、教壇で〇茎を弄っていたり、兄が人瘤病患者の妹の母乳を吸うシーンが出てきたりとなかなかに香ばしい。メインとなる舞台が二つあって、まず出てくるのが人間ヘルス「こぶとり姉さん」の従業員、カブやジンタ、マネージャーのポッポなど。変態客イモコのせいでお店が火災に遭ってしまい、一年後に復活してから新しい人瘤病患者を探すために累地区へ、そしたらなんだかんだあって従業員のジンタが殺害され、引き取った怪物級の人瘤病患者パルコは大暴れ。もう一つは中学生のサラ、ウシオ、クニオ、ミサオグループが巻き込まれる殺人事件。教師からの虐待やサラの親友ツムギ探しなどを経て、最後はカブらと接触、三人の殺害事件の犯人を色々な登場人物が色々違う推理をしていく、っていう。
 
とても大きな声で好きとは言えない。。。
が、人面瘡が潰れたり喋ったりするのが気持ち悪いだけで、いわゆるスプラッター系ではなかったのがホっとした。一つ一つのネーミングセンスや想像力は天才レベルだと思う。文章力もかなりのものなので、気持ち悪いわ~、不快だわ~、と思いながらも最後まで飽きずに読まされた。これだけ小説として完成されていたら、最後にばたんばたんと二転三転させ難解なロジックで畳み掛けなくても良かったと思うのだが。。せっかくの作品にケチをつけるわけではないが、かなり頭がこんがらがったのでだいぶ疲れた。
 
もうしばらくしたらまた1作読んでみようかな。元気な時に。

ノースライト  (ねこ3.6匹)

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横山秀夫著。新潮社。

横山ミステリー史上最も美しい謎。 熱く込み上げる感動。 一家はどこへ消えたのか? 空虚な家になぜ一脚の椅子だけが残されていたのか? 『64』から六年。待望の長編ミステリー。 一級建築士の青瀬は、信濃追分へ車を走らせていた。望まれて設計した新築の家。施主の一家も、新しい自宅を前に、あんなに喜んでいたのに……。Y邸は無人だった。そこに越してきたはずの家族の姿はなく、電話機以外に家具もない。ただ一つ、浅間山を望むように置かれた古ぼけた「タウトの椅子」を除けば……。このY邸でいったい何が起きたのか? (紹介文引用)
 
話題になった横山さん久々の長編。「看守眼」「64」がまだ未読なのだがこちらを先に。
 
主人公は建築士の青瀬。インテリアプランナーの妻と離婚後、ひとり娘の日向子と月一度の面会が習慣となっている。吉野夫妻に「あなたの住みたい家を建てて下さい」と信濃追分での新築設計を依頼されたが、数ヵ月後、その家に吉野夫妻は住んでいなかった。一脚だけ残されたタウトの椅子にはどんな謎が?一家はどこへ消えたのか?
 
「タウトの椅子」というのが物語の骨子となっていて、一家行方不明事件よりはタウトという建築家について掘り下げる内容のほうが大きい。また、岡崎設計事務所メンバーとの人間関係や青瀬自身の家庭の問題にもかなり比重がかかっていて、無駄のない描き込みが横山さんという作家の筆力を感じさせる。登場人物のルーツを紐解いて二つの大きな謎が最後にやっと交わるのだが、それとこれとは別かな?そう思うと建築家サイドの話は結構苦痛だったかな。。タウトの作品には興味が湧いたけれども。事務所内の恋愛沙汰もなかなかにうっとうしかった…。特にマユミさん。自分がいくら好きでも、相手夫婦の子どもの出自がどうとか奥さんの素行がどうとか、所詮他人が入って行っていいものではないと思うなあ。もっと周りを見て、いい恋愛をして欲しい。いや、多分きっとその相手は出てきているんだけれど。青瀬のほうも、もしかしたら希望があるんじゃないかな。ちょっとした行き違いだったわけだし、やはりちゃんと話をしないと相手のことなんて分からないんだなあと思った。
 
さておき、青瀬がこの事件に関わることによって建築士としてのプライドややる気が再燃したのは喜ばしい。事務所一丸となって仕事をやり遂げようとするラストは胸がすく思いだったし、青瀬の再生物語としてはかなり熱い作品じゃないかな。吉野夫妻の謎については何だそれと思ってすいません。
 
ちょっと横山さんに求めるものとは違ったけど、なかなかの力作。

文学少女対数学少女  (ねこ3.7匹)

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陸秋槎著。ハヤカワ文庫。

高校2年生の“文学少女”陸秋槎は自作の推理小説をきっかけに、孤高の天才“数学少女”韓采蘆と出逢う。彼女は作者の陸さえ予想だにしない真相を導き出して…“犯人当て”をめぐる論理の探求「連続体仮説」、数学史上最大の難問を小説化してしまう「フェルマー最後の事件」のほか、ふたりが出逢う様々な謎とともに新たな作中作が提示されていく全4篇の連作集。華文青春本格ミステリの新たなる傑作! 解説:麻耶雄嵩(裏表紙引用)
 
陸秋槎さん二冊目。「元年春之祭」がなかなか印象的だったのと、解説者の名前を見てもらえれば読んだ理由は明白かと。この前に1作出ているようなのだが先にこちらを(いずれもシリーズものではないので問題なし、たぶん)。
 
4編収録の短編集になっているが、それぞれタイトルが「連続体仮説」「フェルマー最後の事件」「不動点定理」「グランディ階級」となっていて、もちろんなんのことやらサッパリ分からない。これは多分私のような数学オンチが手を出してはいけないやつ。ヒロインの1人、韓采蘆(かん・さいろ)が数学オンチの親友・陸秋槎(りく・しゅうさ)に数学薀蓄を延々披露するくだりが必ず入っているので、超絶難解。。しかし挫折しようと思わなかったのは、キャラクターの魅力や文章の読みやすさ、中国ミステリーでしか味わえないヘンテコな世界観ゆえのこと。ジャンルで言えばアンチミステリーだが、ライトノベル向きの可愛さ、親しみやすさがあり、まあこりゃ麻耶さん好きだろうなあと納得した次第。
 
それぞれのお話では文学少女・秋槎が書き上げた犯人当て小説を解き明かしたり、現実に起きた傷害事件を推理したりと各話飽きずに楽しめる。真相の持って行き方はどうしても変則的なのでそこは好みになるか。正統派でないことだけで限って言えば、麻耶さんやアントニイ・バークリーの系統。ん?私にぴったりではないか。
 
まあ数学薀蓄は置いといて、やっぱりこの作品でも印象に残るのは友人同士で死ぬほどの暴力を加えようとするシーンが多いことかな。。サディストなんだろうか。。。百合要素が入っているのだろうか。。。面白いんだけどやっぱりなんだかいびつ。。
 

紙鑑定士の事件ファイル 模型の家の殺人  (ねこ3.6匹)

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歌田年著。宝島社文庫

第18回『このミステリーがすごい! 』大賞・大賞受賞、読書メーター「読みたい本ランキング」第1位の作品が、待望の文庫化! どんな紙でも見分けられる男・渡部が営む紙鑑定事務所。ある日そこに「紙鑑 定」を「神探偵」と勘違いした女性が、彼氏の浮気調査をしてほしいと訪ねてくる。 手がかりはプラモデルの写真一枚だけ。ダメ元で調査を始めた渡部は、伝説のプラモデル造形家・土生井(はぶい)と出会い、意外な真相にたどり着く。 さらに翌々日、行方不明の妹を捜す女性が、妹の部屋にあったジオラマを持って渡部を訪ねてくる。 土生井とともに調査を始めた渡部は、それが恐ろしい大量殺人計画を示唆していることを知り――。(紹介文引用)
 
初読み作家さん。19年度「このミス」大賞作。
このミス大賞ものは絶対と言っていいほど合わないのでほとんど手を出さなくなってしまったのだが、こちらは珍しく食指が動くタイトルだったので読んでみた。
 
まず、文章はとても読みやすいと思う。主人公渡部が紙鑑定士という聞きなれない職業なのも興味を惹かれる(実際にはこういう職業はないらしい)。「紙鑑定士」を「神探偵」と読み間違えてやって来た女性の人探し依頼を本当に受けちゃうのも面白い展開で、さらにもう1人の探偵役土生井がプロモデラーだというのも少々変わっている(厳密に言えば探偵役は土生井で渡部は動き回るワトスン役))。最初に手がけた事件が短編ふうに終わるので、この感じで行けばめちゃくちゃ高評価だったのだが…。残念なことに、メインストーリーである事件のほうが結構ぶっ飛んでいてついていけなかった。
実際に蓋を開ければ歴史に残るぐらい衝撃的な事件で、それを紙鑑定士とプロモデラーが暴く、っていうのはあまりにも荷が重くないか。元妻の真理子がなかなかに「飛んでる」女性である上、依頼人の晴子がかなり土生井の人生に食い込んでくるので、そういうキャラ立ちゆえのコミカルさが事件とアンバランスでのめりこめなかった。犯人の人格がうんぬん、ってなっちゃうと何でもありになるしなあ。。最後も二時間サスペンスみたいな変な盛り上がり方しちゃうし。
 
なにより、紙鑑定と事件やストーリーが全然関係なかったのがイタイ。けど、エンタメとして軽く読むには光るものもあるし、決して悪い作品ではなかったかな。